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March 10, 2012

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ギリシャ債務問題が一応の決着、されど

3月9日にギリシャ政府が、民間が保有するギリシャ国債2060億ユーロ(22兆円)につき債務削減同意がなされたと発表し、これを受けてEUとIMFも1300億ユーロの追加支援を事実上承認したと発言しました。

 債務削減の詳細は、ギリシャ国内法による1770億ユーロについては83.5%の同意が得られたので集団行動条項が発動され、全額が元本を53.5%カットして15%の現金と31.5%の新発債との交換が行われます。

 新発債とは2023年償還で利率が2%とされ、発行前取引では価格が25%程度(利回り19.%後半)の気配となっており、実質的な負担額(要するに損切り額)が8割近いことになります。

 残る外国法(主に英国法)による170億ユーロと政府保証債の100億ユーロについては同意が69%程度であり、引き続き同意を求めていくようですが、こちらの方はヘッジファンドなどの保有も多く予断を許しません。デフォルト宣言などの「ゆさぶり」をかけてくる可能性もあります。

 不思議なことなのですが、外国法による債券の中には1100億円ほどの円建て外債(サムライ債)が含まれているのですが、これは今回の債務削減の同意を求められていません。これでもって「全額償還される」という「楽観的な見通しが」出されているのですが常識的には考えられないので、もっとよく確かめるべきだと思います。

 もう1つCDSも決済されることになりますが、またどこかで「巨額損失」が出てくるかもしれません(欧州のマスコミでは野村証券の名前が出ています)。

 さて、今回のギリシャ問題の発端は2009年に発足したパパレンドウ内閣が、2009年のギリシャの財政赤字が発表されていたGDP比5%ではなくて12.7%(その後15.4%へ修正)だったことを「告白」したことから始まりました。つまりギリシャはユーロ発足から2年遅れの2001年1月にユーロに加入したのですが、そもそも加入条件である財政赤字がGDP比3%以下、債務残高が60%以下も全く満たしていない「不正加入」だったのです。

 しかし、そこからユーロ諸国は徹底的にギリシャ支援を始め、まず1100億ユーロの第一次援助を決めました。まずユーロの枠組みを守ることを最優先として現在に至っているのです。

 さらに昨年末からECBも巨額量的緩和(2回に分けて1兆ユーロ以上)を行い、金融界の不安を和らげました。

 ここまで「大騒動」をしてとりあえず救済したギリシャなのですが、それではギリシャの根本的問題は解決しているのでしょうか?

 日本では、ギリシャの財政危機の原因を公務員の多さや給料の高さ、年金負担の多さなどが強調されているのですが、最大の原因は一部の富裕層による、公営企業などの利権の独占、脱税、資産の海外逃避などにあるのです。

 地下経済がGDPに占める比率では、ギリシャは30%で世界最大なのです。次いでイタリアの27%、スペインの23%とユーロ圏の債務問題国が続きます。つまり、これらを放置しておく限り、幾ら支援してもザルなのです。前回の1100億ユーロの支援も、今回承認された1300億ユーロの支援も、大半が「消えて」しまうはずです。

 思い出すのは、1998年にデフォルトするほど疲弊していたロシア経済は、その原因が急激な自由経済化で国家の利権が新興財閥「オリガルヒ(大半がユダヤ系)」に独占され、彼らがほとんど税金を支払わずに海外に資産を逃避させたからでした。

 2000年に就任したプーチン大統領は、KGBの人脈を駆使してホドルコフスキーなどを投獄し、大半のオリガルヒに(命と引き換えに)納税を確約させてロシア経済を立て直したのです。

 ギリシャもこれくらいやらなければダメなはずで、「ユーロの枠組み維持」を人質にとられたユーロ首脳の「官僚的」「平和的」な解決方法では、いつまでたっても同じ問題が繰り返されるのです。

平成24年3月10日 

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