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July 29, 2012

なぜ渋滞時は追い越し車線のほうが流れが悪いのか 人間はアリにも劣る

高速道路には走行車線と追い越し車線がある。統計によれば、空いている時間帯にはそれぞれ平均時速80キロ、100キロほどで流れている。ところが速度が30キロ以下の「渋滞」になると逆転し、時速数キロほどだが、走行車線のほうが速くなることがわかっている。なぜこのような逆転現象が起こるのだろうか。

 車の数が増えて車間距離が短くなると、速度を維持しようと車線を変更して、追い越し車線に移る車が増える。渋滞になるとその割合は5割を超し、追い越し車線を走る車のほうが多くなってしまう。このため追い越し車線のほうが走行車線より混雑し、速度が低下してしまう。

 私の専門はこのような「渋滞学」だ。研究によれば、混雑時には、急いで走るよりもゆっくり走ったほうが、目的地により早く着くこともわかっている。

 交通がスムーズに流れている状態から渋滞へ移行する臨界密度は、2車線の場合、統計的には1キロメートルあたり50台。平均時速72キロ、車間距離にして40メートル、約2秒ごとに車が行き交うような状態だ。外からはスムーズに流れているように見えるはずだが、このとき多くのドライバーは「そろそろ危ない」「今のうちに急ごう」と考え、速度を上げて、車間距離を詰めてしまう。

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July 20, 2012

ドイツの電力事情―理想像か虚像か―

7月1日、日本でもとうとう再生可能エネルギー全量固定価格買い取り制度(Feed in Tariff)がスタートした。
 こうした制度を活用して再生可能エネルギー導入に成功し、福島原子力発電所事故後早々に脱原発を宣言したドイツは、今後我が国の電力システムを検討するうえでの「理想像」とも言われている。彼の国を理想として追いかけて、たどり着く先は本当に理想郷なのか。
 ドイツの電力事情について、つい最近ドイツ連邦水道・エネルギー連合会(BDEW)のホームページに同国の最新情報が掲載されたので、そのデータをここにご紹介したい。

電源計画について

 下記の表が2012年4月現在、ドイツが掲げる電源開発計画(ステータス別)である。これを見ると、設備容量ベースで約7割が化石燃料であり、彼らが国内に潤沢に持つ石炭(質の悪い褐炭が多い)を主力としていることがわかる。
 なお、再生可能エネルギー(揚水水力を除く)は設備容量ベースでも18%にとどまっている。当然のことながら、再生可能エネルギーの稼働率は低いので(ドイツにおける太陽光発電平均稼働率は10.4%、風力が23.4%とされる)、発電電力量ベースであれば、さらに少なくなる。我が国においては、「原子力か再生可能エネルギーか」と二項対立で語られることが多いが脱原発を進めるドイツでは、実は冷静に原子力の代替を化石燃料で図り、エネルギーの安定供給には支障が出ない現実的な計画になっていることがうかがえる。
 さらに付け加えるならば、送電系統が連携しているヨーロッパの一カ国と日本の電源構成を比較してもあまり意味はなく、ヨーロッパ全体を俯瞰すると日本と似通った電源構成となっている。

Opinion120711chart1

出典)BDEW(Bundesverband der Energie und Wasserwirtschaft:ドイツ連邦エネルギー・水道連合会)
http://www.bdew.de/internet.nsf/id/91C0FC9A8D7AD3EEC12579E9002F8CBF/$file/120424%20Anlage%20zur%20PM%20Hannover_Kraftwerksliste%20aktuell.pdf

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July 15, 2012

中国“当然の権利”振りかざし厚顔無恥 四文字熟語の似合う破廉恥国家

盗人の頭目が、手下に「盗みは悪いことだ」と説教するが如き、誠にもって珍妙なお話をひとつ。

 中国農業省が、中国と北朝鮮の漁業組織間で結ばれた協定の遵守を遼寧・山東両省と大連市に通達したのは6月。北に近い黄海海域で5月、操業中の中国漁船が北当局に拿捕され、罰金要求された事件を受けた措置のようだ。協定は、この海域で操業する際には、両省や大連市の許可が必要で、勝手に出漁した漁民は中朝双方が摘発する-としている。

 笑える。中国漁民は世界中の海で漁業資源を乱獲し、生態系を壊している。外国領海や禁漁区もお構いなし。取り締まり当局相手に立ち回りまで演じているから、一部中国漁民は海賊と呼んでも差し支えない。中国は漁民=海賊を外国海域に出漁させ既得権を構築。海上警備当局に彼らを保護させ、紛争を待って海軍を繰り出す戦法を繰り返し“中国の海”を拡大してきた。海賊であり獅子身中の虫に協定・通達遵守を求めるのは無理。一方で、賄賂を贈られた当局側が、漁民の違反に目をつぶる構図は社会・経済構造上の伝統様式となっている。


朝飯前の「朝令暮改」


 そもそも、中国政府に協定・通達遵守といわれてもピンとこない。漢書には、一度口に出した君主の言葉は、汗が再び体内に戻らぬように、取り消すことができない「綸言汗の如し」という喩えがある。しかし、中国政府=中国共産党の外交姿勢を見ていると、自国に不利な解釈を180度変更して恥じるところがない。漢書にある「朝令暮改」など朝飯前だ。中国VSベトナムと中国VS日本の2件の海洋係争は典型である。

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July 05, 2012

コラム:「超円高」認識は誤り、政治迷走なら円安も=伊藤元重教授

伊藤元重 東京大学大学院教授

[東京 2日 ロイター] 為替レートは経済のあらゆる動きに反応する。日本の金利や貿易収支が動いても、欧州で財政危機が深刻化しても、中国の経済が減速しても、そして米国が金融緩和をしても、それに反応して動いてしまう。リーマンショック後の円高は、こうした経済の動きへの反応に他ならない。

この先、さらに円高に動くことはあるだろうか。それとも、そろそろ円高のピークに来ているのか。足下の動きを見る限り、どちらの判断も難しい。

年初に欧州の金融情勢が少し落ち着き、米国の景気にも回復の兆しが見えていた頃は、円レートは円安方向に動く気配を見せていた。しかし、ギリシャの選挙結果、あるいはスペインの債務危機の深刻化などで、また円高方向への動きが世間を賑わしている。

今年後半も円レートは大きな変動を示しそうだ。困ったことに70円台前半の円高にも、そして80円台後半の円安にも、簡単に動くことがありそうなのだ。なぜそうなのか、現状を整理してみたい。

<95年に比べて、実質30%も円安>

まず認識しなければいけないのは、「現在の円レートが歴史的にも際立って円高である」という考えが間違っていることだ。それどころか、1995年頃に経験した過去最高の円高に比べて、実質的に30%以上も円安である。水準として見て過去の平均よりは若干の円高であるが、特に際立って円高ではない。

実質実効為替レートを理解している人には、このことは説明するまでもないだろう。大学でも、私は学生に「為替レートを名目で見るのは素人、プロは実質で見る」と教えている。

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July 04, 2012

コラム:リーマン危機前夜に似た国際マネーの流れ=熊谷亮丸氏

熊谷亮丸 大和総研 チーフエコノミスト

[東京 3日 ロイター] 6月17日のギリシャ再選挙では、緊縮財政派の新民主主義党(ND)が勝利し、同党を中心とする連立政権が発足した。「ギリシャのユーロ圏離脱」の可能性がひとまず低下したことを受け、国際金融市場では株高・ユーロ高がいったん進行した。

確かに「最悪の事態」は回避されたが、結論としては、欧州ソブリン危機が解決したとの見方は時期尚早であり、今後も不安定な状態が続く見通しである。

欧州ソブリン危機が日本経済に与える影響に関する大和総研のシミュレーションによれば、最悪のケースでは、わが国の実質GDPは4%以上押し下げられるリスクがある。試算結果については、相当程度の幅を持って見る必要があることは言うまでもないが、今後、欧州ソブリン危機が深刻化した場合、日本経済がリーマンショック並みの打撃を受ける可能性があり、要注意である。

本稿では、グローバルなマネーフローの動向に焦点を当て、この危機が再度深刻化した場合のリスクシナリオについて考察したい。

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