コラム:安倍相場の深層分析、三段跳びで15年ドル115円も=田中泰輔氏
田中泰輔 ドイツ証券 チーフ為替ストラテジスト(2013年3月18日)
「安倍相場」の円安と株高が相乗的に続いている。野田佳彦前首相が総選挙実施を表明した昨年11月半ば以降の4カ月間で、ドル円は20%、東証株価指数(TOPIX)は40%超上昇した。一方で、足もとのファンダメンタルズの変化はまだ微小な胎動に過ぎない。では、どのような力がこの劇的な「安倍相場」をもたらしたのか。
過去4カ月、ドル円相場に押し目はほとんどなかった。円資金を持たずに円を売る海外投機筋が主導する相場なら、やがて彼らが円を買い戻す場面でドル円に押し目が生じる。押し目がない加速的相場は、状況証拠として、投機の円買い戻し圧力を押し返す非投機の円売りの存在をうかがわせる。以下、安倍相場の深層フローの世界をご案内しよう。
<「Inside 安倍相場」の正しい理解>
11月半ば以降、最初は確かに海外投機筋が円安ドライバーだった。しかし、彼らは持ちうる上限量まで円ショートを一気に作り、12月上旬に82円台で利食いの円買い戻しを始めた。これを押し返したのは日本勢の海外直接投資のための兆円単位のドル買いだったと見られる。投機筋は円を買い戻しても円高にならないのを見て、円売りを繰り返し行った。