近代史を独立させろ~新しい教科書を読んで~
書店に立ち寄ったら扶桑社の歴史教科書が販売されていたので、明治以降だけを立ち読み。
果たして今話題の「反」自虐史観がどの程度のものなのか大いに興味あり。
ヒトラーとスターリンに関し、
「二つの全体主義国家はたがいに対立しつつも、相手から支配のやり方を学びあっていた。」
なるほど。
具体的な根拠があるかどうかはともかく、そうした一面は大いにありそう。
もっとも日本も軍部が天皇制を利用した全体主義という面では、同じ穴のむじな。
朝鮮半島情勢に関する基本認識は、
「ロシアの支配下に入れば日本を攻撃する格好の基地となり、日本の防衛が困難になる」
「日本は近代化を始めた朝鮮に軍事改革を援助。朝鮮視察団も明治維新の成果を学ぼうとした」
「朝鮮が他国におかされない国になることは日本の安全保障にとっても重要だった」
と、あくまで自国の都合と安全保障重視のもっともな論調。
韓国併合に関しては、
「日本政府は、日本の安全と満洲の権益を防衛するために、韓国の併合が必要であると考えた」
「朝鮮総督府は植民地政策の一環として、鉄道・灌漑の施設を整えるなどの開発を行い」
と自分が必要なら相手の都合などお構い無しなのかという一方、最後に
「土地調査事業によってそれまでの耕作地から追われた農民も少なくなく、日本語教育など同化政策が進められたので朝鮮の人々は日本への反感を強めた」
と反日感情も渋々といった調子で記載して見事に客観性を担保。
関東軍が中国でのプレゼンスを強化していく過程では、野蛮な中国人に対する邦人保護という背景を強く打ち出す。
何しろ、
「中国人の民族的反発は、暴力によって革命を実現したソ連の共産主義思想の影響も受け、過激な性格を帯びるようになった」
とソ連誕生を一刀両断に暴力革命と断定する小気味よさ。
(こんなに単純に決め付けて教えて良いのか、本当に)
満州事変に関しては、
「中国人による排日運動も激しくなり、列車妨害や日本人への迫害などが頻発した」
「満州で日本人が受けていた不法行為の被害を解決できない政府の外交方針に不満をつのらせていた国民の中には関東軍の行動を支持する者が多く」
など、そもそもどちらが悪いかは無視して、中国の粗暴さを強調。
大東亜共栄圏構想についても、驚くべきほど素直に好意的。
昭和18年に東京で開催された大東亜会議は集合写真まで掲載。
「各国の自主独立、相互提携による経済発展、人種差別撤廃をうたいあげた」
と、こちらが恥ずかしくなるような宣言を誇り高く、堂々と記載。
挙げれば切りが無いが、要するにいわゆる南京大虐殺など都合が悪い事実は淡々と記載する一方、これまで侵略的と言われていた日本の大陸進出に関しては、自国防衛上の必要性を強調し、先人へのリスペクトを促す。
台湾でダム開発にあたった八田與一や、ユダヤ人を助けた樋口季一郎、杉原千畝も大きくコラムで紹介。
最初は抵抗を感じたが、ざっと読んで思ったのは、こういう教科書があっても良いのではないか、ということ。
アメリカが原爆投下に対して一切非を認めないように、どの国も過去の自分の行為を正当化しようとするのはある意味で当然。
歴史における原因と結果は一元的では無いから、多面的に見るという意味で、全てが贖罪的である必要はない。
この教科書を利用する中学生は、是非教科書だけではなく多くの書物から事実を学んで、自分の歴史観を構築すて欲しい。
但し、日本の教育現場では、当たり障りの無い縄文だ、鎌倉だに意図的に時間をかけて、近代史までたどり着かない内に授業が終わってしまうようにする、という国民的お約束がある。
その対策として、幕末以降を切り離して別の科目にすれば良いと思う。
そうすれば教師も生徒も親も近代日本の姿から逃げられず、ともかく過去と向かい合うしか無い。
生徒も時間をかけて議論出来るし、何しろ歴史の中で一番面白い部分だから、興味を持って司馬先生の作品やら、色々と読むようになる。
いずれにしても、ここからかなりの部分が読めるので、是非どうぞ。
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