ソフトバンクのボーダフォン買収は買いか
1.買収価格について
VF株式を取得するSBの子会社は、資本金2000億円、優先株4200億円、劣後借入1000億円、銀行借入1.1~1.2兆円の構成。
この中にはVFJの既存借入が引き継がれているため、NETでは1.75兆円。
VFJの04年度決算は、売上1兆4700億円、営業利益1580億円、経常1533億円、当期利益1620億円。
(減価償却2370億円、EBITDA4030億円)
発行済株数は5427千株で、EPS38340円。
①PER
買収金額1.75兆円は1株あたり322,461円。
PER8.4倍。
但し税効果を修正し、当期利益を経常利益の60%で計算すると、約14倍。
ちなみにドコモもKDDIも14倍。
②利回り
買収価格1.75兆円の修正当期利益(前述)に対する直接利回りは5.3%。
③EV/EBITDA
VFの期末有利子負債は、社債1750億円、短期借入1885億円、長期借入80億円。
計3715億円。
期末現預金は、637M。
EV=2兆1222億円。
EV/EBITDA=5.3倍。
ドコモが5.4倍、KDDI5.0倍。
2.買収手法
金融機関からの借入はノンリコースローン。
SBの事業リスクは出資した2000億円に限定され、財務格付け上は好材料。
連結決算上はVFが取り込まれ、リスクは2000億円に限定され、懸念されたSB本体の希薄化が起こらなかったことから、株式市場と債券市場はポジティブに評価すると思われる。
3.今後のVF
①SB傘下のメリット
・ヤフーコンテンツとのシナジー
・3G通話地域拡大のための継続的投資確実化
・日本テレコム等の設備利用によるコストダウン
・SBのブランドとマーケティングパワーの期待
・VFグループユーザー5.1億人へのビジネスチャンス到来
②デメリット
・法人、女性など保守的ユーザーの反応は未知数
・価格競争の結果3大キャリアが共に沈没する懸念
・VFとの協力体制に軋みが生じるリスク
総じて言えば、今までVFに我慢して来た1500万人は、何らかの形でVFにロイヤルティがあるわけで、今さらの離脱は考えにくい。
一方でドコモ、auユーザーの中でヤフーBB利用者やITリテラシーの高い層はSB、ヤフーへのシンパシーが高く、潜在的な新VFユーザー。
現在の、ドコモ5065万人、au2496万人、VF1514万人という構成を見ると、同等の条件で戦えば、VFのUPSIDE余地が大きい。
auと同レベルの加入者は現実的な目標だが、そのためにはドコモを草刈り場とする戦略が欠かせない。
4.まとめ
価格はフェアバリュー、格付けや希薄化に関しては懸念が無くなり、マーケットはポジティブに反応するはず。
ロングレンジの株価は、ヤフーを軸に、コンテンツ、価格、通話地域など総合的な魅力を打ち出し、どれだけドコモユーザーである保守層(女性、法人)を取り込めるかが鍵。
孫さんの経営手腕を信じられるのであれば、ちょうど安くなっている今のSBは全力買いでしょう。
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Comments
大変分かりやすい分析ありがとうございます。
VFの成長曲線がマイナスだったことを考慮すると少し高いかなというのが実感ですが、ソフトバンクorヤフーとのシナジーを考慮してあるんでしょうね。
何はともあれユーザー側にはメリットの方が大きいと思うんで楽しみです。ドコモも目を覚ましてくれるといいんですが・・・
Posted by: masato | March 19, 2006 11:31 AM
masatoさん、こんにちは。
VFの現状はおっしゃる通りですが、だから買い叩こうとすると交渉はまとまらないでしょうし、これだけ大きな国際的ディールをフェアにまとめた孫さんの姿勢はビジネス界で正しく評価されるので、結局は「おとく」だと思います。
2時間近くかけて記者説明会を全部見ましたが、立派な応対内容でした。
質問はお馬鹿なものが多かったので、こんなメディアの書くことなど当てにはならないということが、ますます世間に広く認知されることになりそうです。
Posted by: akazukin | March 19, 2006 01:12 PM