HとMが残したもの
村上氏が近日中に逮捕されることは確実で、これを機に1月16日に始まった一連の混乱が一応収束に向かうのではないかと思われます。
LDに強制捜査が入った時から、次はMだろうと言われており、その影が個人の株離れの大きな要因の一つであったことは疑いありません。
権力のルール解釈がマーケットを律するという現象はあまり好ましくはありませんが、今回の二人に対してはそうした同情論が入り込む余地は無さそうです。
LDに関しては、ファンドを利用した自己株売買による決算操作というのがテクニカルな面での「悪事」なわけですが、要するに好きになれないビジネススタイルだったという事が、より本質的な問題かと思います。
私自身も、100分割など、まるでゲームのように市場と投資家を弄ぶ姿勢が嫌いでしたし、ポータルサイトとしても、ヤフーとグーグルで足りていたので結局ライブドアIDは取得せず、投資銘柄としても、事件発覚まで一度も触りませんでした。
二人とも、利益(金)が全て、という言い方を共通にしていますが、わかっていないな、と思わざるを得ません。
地位に限らず、収入も、所詮は社会の理解あってのもので、彼ほどの人間なら年間10億円稼いでもそれは当然だろう、という暗黙の了解があってこそ、そのポジションが認められ、維持されるものです。
あいつは悪いやつだけど仕方がないところもあるな、という認識が違法すれすれの行為やそれを行う人間たちに関し、ある意味「存在は認める」という意識を醸成します。
山口組が阪神大震災のとき、幹部宅で大量の水と生理用品を無償で配るなどしたのは、偽善的行為と言ってしまえばそれまでですが、周囲から完全に嫌われてしまったら、自分たちは生きていけないということを、多少は理解している証拠だろうと思います。
ルールを守っているかどうかなどという解釈は、実は瑣末な話であり、それよりも社会としてその存在価値をどう認識してもらうかの方がずっと重要ですが、最近の村上氏の手法はあまりに荒削りで、グリーンメーラーと言われても仕方がないほど、多くの人に取って拒否反応を起こさせるものでした。
将来こんな投資家になりたい、と思った人は皆無でしょうし、ソロスやJ.ロジャースが持っている洗練さやロマンティシズムのかけらもありません。
社会の認知が得られないという意味では一部のMSCBや敵対的買収も同様で、ステークホルダーの利害バランスに十分配慮したものとは言えない手法を多用する経営者には近づくべきではないと思います。
資本主義が高度化してくると、株式市場ばかり気にしてしまう経営者が増えますが、ソフトバンクの孫さんが多くの人から尊敬されているのは、株価については語らず、事業の価値向上だけに懸命だからです。
毎年5月2日を「恩人感謝の日」とし、グループ全体の指定休日とするようなメンタリティも持ち合わせています。
株価を重視し過ぎ、自分たちが顧客と接している本来の市場を軽視してしまうと、結局はマーケット全体から抹殺されてしまいます。
これはルール云々というよりも、社会の自浄作用とも言うべきもので、国によって若干違いがあり、日本の場合にはやや行き過ぎがあるかもしれませんが、協調を重んじる風土はそれ自体文化でもあるので、そこは「空気を読め」としか言いようがないことかと思います。
今私の手元には、ライブドアの議決権行使書と同封された「お詫び状」があります。
上場廃止決定後、この事件の教訓を忘れないように、1000株購入しました。
今回の株主総会に出るつもりなど全くありませんが、今後この会社がどのような変化と成長を遂げるのか、あるいは衰退の道を転げ落ちるのか。
むしろこれからが長いお付き合いの始まりだと思います。
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