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August 26, 2006

伸びないCPI-大円安時代の始まり-

昨日朝発表された弱いCPIを材料に円が売られました。
尊敬するフジマキさんも、さぞかしお喜びのことでしょう。

日本のメディアでは「予想を下回り+0.2%」というキャッチですが、欧米との比較では「食品、エネルギーを除くと前年比マイナス0.3%」が使われるでしょうから、海外投資家がよりネガティブに反応したとしても頷けるところです。

実感としても、ガソリンや野菜を除けば、顕著に値上がりしたモノは無く、支出が増えているのは、「ちょい高」商品を買っているのが理由という気がします。

無論不動産をはじめ資産系の価格は上昇しているものが多く、こうしたCPIと資産価格のズレはバブル時代に顕著にも見られた現象です。

可処分所得の二極化という側面から考えると、290円のラーメンが要請されている一方、億ションも即日完売するという状況は当然に両立しています。

この状況を、デフレ脱却という観点からどのように捉えるべきかは、スタンスによってそれこそ二極化しているわけですが、食品、エネルギーを除く総合指数で見ると、平成17年以降前年同月比で「プラスの月がありません」。

単純平均で計算すると、H17年後半が前年同月比-0.28%に対し、H18年1~7月は-0.5%とむしろ悪化しているとの捉え方さえ出来ます。

ここからは明確なデフレ脱却の様子は窺えず、むしろガソリン等エネルギー価格の上昇で奪われた消費者の財布の中身を奪い合うために、まだ熾烈な価格競争が行われているとの解説がふさわしく思えます。

上記の-0.5%を前提に考えるなら、消費者サイドから見た実質金利は名目より高いことになり、これが低所得者層から富裕層へのさらなる所得移転を促していると考えれば、一般庶民(死語?)の実感ともすり合うでしょう。


弱いCPIを材料に、日銀の年内(あるいは年度内)再利上げは困難になったという見方が急浮上し、欧州勢が参加する昨日夕方以降から円が大きく売られました。

今後中期的に見た場合に、日米金利差が本格的に縮小する可能性は極めて少ないように思います。

人口減少と高齢化により日本の成長力が穏やかに衰退する中で、世界市場で稼ぐ日本企業は生き残るでしょうが、それは企業の設備投資が世界の景気動向に依存することを意味します。

日本だけが突出して好景気を謳歌することは不可能であり、言うまでも無く財政赤字の国民負担は重く、既に定率減税は段階的な廃止が始まっており、いずれは消費税の税率アップが来ます。

内需喚起は住宅関連が肝ですが、既にこの業界は全力疾走中ですし、住宅ローン減税の段階的廃止と消費税駆け込み効果を考えると、おそらく今がピーク。

消費意欲、豊かさへのあくなき欲望が資本主義のエンジンであるとするならば、我々がパワーでBRICSに勝つことは不可能です。

思えば360円時代に築いた資産は今や3分の1の価値。

これから、だらだらと長い坂を転げ落ちるような長期円安時代が始まるとすれば、それは長いハードワークで稼ぎ上げた海外資産の目減りに対する、神(アメリカ)からのせめてもの「お情け」と言えるでしょう。


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