なぜ円で運用するのか
陸上選手の為末大さんがヤフーファイナンスでコラムを書かれています。
為末さんは
「世界各国の選手とお金の話をすると、自国の通貨で保有している選手は意外と少ない」
「大方の国民が選挙にも国政にも外交にも興味はないけれど、持っている資産は日本円。何とも不思議な国です。」
と、語っていますが、スポーツ選手が試合の合間に「ところでお前はどこの国(通貨)で運用しているのか」なんて会話をしているのは面白いです。
日本で暮らす以上は、生活費は円で支払わなければなりませんが、投資、運用に関しては、円であることのアドバンテージは特段ありません。
為替の問題はリスクではありますが、リターンもあるので、これは絶対的なディスアドバンテージとは言えないでしょうし、そもそも投資・運用とは一定のリスクを取ることですから、為替リスクだけを特別に避けるのも合理的ではありません。
円での投資は情報量が圧倒的に多いというメリットがありましたが、最近ではそれも決定的な差ではなくなっています。
先日の日経金融新聞では、投信を卒業してADRでインド株を買う個人投資家の例が紹介されていましたが、今やそうした行為も特別難しいわけでもなく、一定のリスク管理が出来れば、絶対金利水準が高い外貨、絶対成長スピードが速い新興国家の方が、基礎的な投資環境として有利に決まっています。
いち早くそれに気が付いている個人は、既に資産の相当割合を外貨で保有する道を選択しています。
慎重な人はグロソブなどの投信から入門し、よりアクティブな人は外国株式やFXという順路でしょうが、こうした層は、今後とも確実に増えるでしょう。
私は、個人金融資産1500兆円の相当部分が外貨に変わるまで、円売り圧力は途切れないと考えています。
日銀の資金循環統計によると、2004年から2005年にかけて、家計が投信や株式などリスク資産を保有する割合は3.9%増加しました。
その内2割が外貨建てとしても、約12兆円の資本流出。
現在の日本の年間貿易黒字が約14兆円ですから、貿易実需の円買いを打ち消すほどのボリュームがあります。
債券投資は出超、FX(いわゆるノンコマーシャル部門)は所詮大部分が短期でチャラと仮定するなら、大まかに言って需給側面から円高が定着するのは難しいということになります。
憲法改正、教育基本法の改正など、ライトウィングの政策が支持を集めるようになっていますが、背景としては、世界全体が「自国」という「シェルター」を意識し、内向きになっている現象があります。
アメリカが、テロとの戦いという名目で、自国だけの利益を目指し、孤立する政策を取っていることが民族意識を刺激し、世界各国は小さな単位で分割されて行きます。
米英同盟という古典的な価値観では国がまとまらないという実態が、ブレア首相を退陣に追い込みました。
世界各国がグローバルな連帯よりも地域ブロックによる安全保障と自国のアイデンティティを優先させる流れの中、日本の次期政権は当然の成り行きとして、自主憲法を制定しようとしていますが、そうした姿勢は結果として円での投資を減少させると思います。
普通の国を目指すということは、自分の国にばかり投資する人が普通の割合に減っていくことでもあると予想されるからです。
この記事が参考になりましたら BlogRankingに一票をお願いいたします。
Comments