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June 10, 2007

長期金利はさらに上がり続けるのか

アメリカの長期金利の急上昇に始まったミニパニックは、8日のNYDOWが大きく反発に転じたことで一旦収束しそうに思えますが、長期トレンドで見た場合、金利上昇は初期段階に過ぎないのかもしれません。

90年代以降、世界的に金利は低下傾向にあり、ディスインフレの時代とも総括されています。

冷静終結でアメリカに「平和の配当」があり、中国が世界の「100円ショップ工場」となり、東欧からの労働力がEUの人件費を抑えました。

中国がアメリカ国債を購入することで長短金利の逆転現象が起こり、バブル処理のために低金利政策を余儀なくされた円と赤字垂れ流しのドルが世界に過剰流動性を提供し、膨れ上がるファンドマネーが不動産の要求利回りを低下させました。

最近になってこうした「安心理論」が急激に転換しています。

・いつまでも長期金利の方が低い状態が続くのか
・中国が豊かになればメードインチャイナが上がるのではないか
・地球温暖化抑制のコストが食品価格を押し上げるのではないか

など、次々と今までの楽観を覆す疑問が提起され、不安が高まっています。
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長期金利のチャートは、歴史的に4%台が低金利の限界という事実を示しており、もしかすると再び金利上昇時代の到来か、とも見えます。

長期金利とDOWの関係を見ると、80年代前半まで金利は高く、DOWはほとんど上昇していません。
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黄金の50年代が終わり、冷戦の本格化とベトナム戦争により経済が疲弊していたということもありますが、最大の原因はオイルショックです。

70年代の終わり、日本の公定歩合は9%、米国政策金利は13%台。
「狂乱物価」という言葉が生まれました。

しかし78年のイラン革命から数年経つと、中東からの石油輸出が回復し、金利は下がり始めます。

そして何より大きな転換点は1985年のプラザ合意で、ここからアメリカの株は猛烈に上がり始めます。

それまで1ドル250円前後だった円は、1年後の86年秋には150円になり、88年1月には121円と、ほぼ現在と変わらない水準になりました。

10円の円高で完全にパニックになっている現在から見ると信じられない激震であり、良く持ち堪えたという他はありません。 

こうして強敵「日本製造業」を撃沈したアメリカは、金余りの日本に古いビルを高値で売りつける一方、次世代インフラであるインターネットを整備し、マイクロソフトなどIT産業を戦略的に育成しました。

90年に日本のバブルが崩壊すると、アメリカ一人勝ちが決定。
成長したIT産業が狂い咲きし、2000年のITバブルまでの10年でDOWは4倍、NASDAQに至ってはほぼ10倍。

どのディケイドよりも株価は成長したのですが、その間長期金利は8%から6%に低下するという完璧な経済運営を見せました。

今世紀に入ると、ITバブルの崩壊に9.11事件が重なって、さすがにアメリカ株式市場は停滞し、2002年DOWは前年比2割も下げましたが、FRBの低金利政策と不動産価格の上昇によって持ち直しました。

またユーロは今世紀に入ってから3割以上切り上がり、多くのアメリカ企業に欧州資本が流入することで、アメリカを資金的に支援しました。

こうして円と欧州通貨が切り下がったことで、アメリカ貿易に取って当面の標的は中国だけとなっていますが、日本の失敗に学んだ中国は絶対に急激な切り上げは行いません。

現在の中国は80年代の日本ほど脅威とは捉えられてはいませんし、アメリカも過度な要求で中国経済を混乱させても元も子もなく、むしろ金融機関の進出により、成長の分け前をもらえれば良い、と考えているように見えます。

残る標的は、資源を背景に影響力を強めるロシアやベネズエラのチャベス大統領など産油国の新興反米集団などでしょうが、原油価格の推移を見る限り、彼らは互角に近い戦いをしています。

バイオエタノールなどの代替エネルギー転換が進んで原油価格が抑えられれば、金利政策も柔軟に選択出来ますし、債券市場へのFRBのコントロールパワーが強まる安心感から株価は上昇という安心シナリオの可能性が高くなりそうです。

逆に中東の緊張やハリケーンを材料に原油価格がまたヒートアップするような事態になれば、金利上昇への対応力を失い、アメリカを中心とした金融市場におけるリスク資産成長は大きく後退し、結果的に我々先進国から見れば面白くないシナリオが待っていることになるのではないでしょうか。

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Comments

興味深いご高察、勉強になります。

新興国の通貨高が進んだ際に旺盛なBrics生産余力を先進国が引き受けられずにさらにBrics国内消費でも消化できないというリスク(デフレリスク)についてはどのようにお考えでしょうか。

私はむしろこちらを懸念しています。

Posted by: Blue | June 10, 2007 08:50 PM

はじめまして!

「インターネット株取引と株式投資ノウハウ!」というサイトを
運営しております大和と申します。毎日ではありませんが、
よく貴ブログを拝見させていただいております。
記事を読ませて頂いて大変勉強になります。
これからもどんどんすばらしい情報を配信してくださいね!
楽しみにしております。
できれば、私のブログも見に来てください。宜しくお願いします。

http://www.yamato-office21.com/kabushiki/

Posted by: 大和 | June 12, 2007 07:10 AM

>blueさん
デフレリスクが顕在化するかどうかに関しては、
過剰投資と言われる中国で、国内の個人消費が今後十分伸びてくるかどうかが鍵かと思います。

格差を気にかける当局は内陸部への投資を積極的に推進してはいますが、投資による内需喚起が十分かというと、自信は持てません。

だからこそ潜在的な爆発余地はあるはずとはいえるものの、この問題には楽観も悲観も出来ないと考えています。
2010年の上海万博までに、現在GDPの40%程度と推測されている個人消費の貢献度がもう少し高まらないと、即ち沿海部と内陸部との格差が一定程度縮小しないと、政治的にかなり危険な状態になるかもしれないなあ、と思います。

Posted by: akazukin | June 12, 2007 10:30 PM

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