豊かさへのゲートは狭い
来週は中国の7月CPIが発表される予定ですが、6月に続いてかなり高い数値が予測されているようです。
「世界の工場」からの「出荷価格」が上がるなら、世界の物価は容易には下がらない。
今後も世界の金利は簡単には下がらないという方向で考えておくべきだろうと思います。
マネーのグローバリゼーションがアメリカの地位を低下させ、中国・インドを筆頭に新興諸国の中産階級が世界の消費を主導する。
世界経済はこの主旋律に沿って動いていて、その他は変奏曲に過ぎません。
これまで日米欧(EU)およそ10億人弱によって半ば独占されていた世界資源の争奪戦に、その2倍以上の人口を有する国々が参加しているのですから、資源高即ちドル安は短期的なテーマではないでしょう。
地球のキャパシティを考えれば、希望者が今すぐ全員先進国並みの生活をするのは無理に決まっていますので、その人数を制限しようというメカニズムが働いているように思われます。
これは先進国の中では、逆に新興諸国入り(落ち?)するフィルターとなります。
まずはインフレ。
物価高に対応出来なければ、自給自足に近いシステムにとどまらざるを得ません。
中国内陸部農村も、アジア・アフリカもまだ無理な地域が多い。
次は賃金抑制。
世界の失業率は全般に改善しているものの、必ずしも賃金は上がっていません。
日本ではいわゆる一般職が派遣社員に置き換わり、残った人々も実質賃金は据え置きです。
そして不動産価格の上昇。
家賃が上がれば、インフラが整備された都市環境に住むことが出来る人数は抑制されます。
日本で今余裕があるのは、株式や不動産を所有する資産階級です。
先行して豊かになった人には既得権的な「枠」が与えられますが、その証しが優良不動産です。
BRICSだけではなく、インドネシア、フィリピンなども含め、中産階級入り希望者が増えれば増えるほど、こうした関門は厳しくなり、世界の均衡は何とか保たれていく。
この仮説の立場に立つと、豊かになりたいと思う欲望がある以上、上に挙げた3つの世界的トレンドは不変です。
追われる立場の日米欧は、それぞれに対応を迫られています。
アメリカの選択肢はもちろん移民受け入れ。
ライバルを積極的に国内に取り入れることで成長の内在化と競争緩和を図ろうとする考え方で、一定の抑制はあるものの、歴史的にアメリカはこの立場。
新興地域との経済的な一体化を図る。
これはEUの政策です。
独仏関係に象徴されるように、民族的な対立が大き過ぎて、アメリカのように移民政策一本槍では上手くいかないでしょうし、二度の世界大戦の経験から、緩やかな連合体によって戦争抑止を志向したと言えそうです。
この試みは今のところ成功していますが、これだけの広範な地域が今後とも同一通貨と金利でやっていけるのかという課題は残ります。
日本は今のところ無策のようですが、敢えて言えば「少子化」でしょう。
移民もダメ、地域連合もダメ。
だったら自分たちの人数を少なくすることで、生き残るしかない。
これは女性に特有の自己防衛本能とも言えますし、全てにおいて「論理より情緒」の国が出した当面の策と解せるような気もします。
この記事が参考になりましたら BlogRankingに一票をお願いいたします。
Comments
極論すると人間よりも物の価値が高くなるということを仰りたいと理解してよろしいでしょうか。私は中国発のデフレをある意味切望していたのですが、このCPIの傾向をみると、どうやらはずれになっちゃいそうなので、降参(=賛成)となりそうです。
こうなってくると世界中で資源争奪戦・生き残り大合戦になってきますね。さらにこの現象が進めば「人間の尊厳」といった大テーマにつながってきそうな気がします。
ChinaのCPI上昇ですが、これは生産の内陸シフトである程度は持ちこたえていくと思っています。インドも同様です。C/Iの企業はいわゆる内陸シフトを強めているようにおもいます。そうだとしてもこの現象をますます進めることになることには変わりないか。
大変な時代になっちゃいましたね(笑)。。
Posted by: Blue | August 12, 2007 08:35 PM
>極論すると人間よりも物の価値が高くなるということを仰りたいと理解してよろしいでしょうか。
その通りです。と言ってしまったら身も蓋もありませんが、コモディティでは価値がない、ということかと思います。
凡庸な労働力ならレアメタルより遥かに安いでしょうし、貴重な人材には100億円単位のマネーが動きます。
Posted by: akazukin | August 12, 2007 09:00 PM