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October 21, 2007

橋のない川

中国、香港市場のバブルばかりが話題になる今日この頃ですが、実体経済との比較で言えば、NYだって十分バブルかもしれません。

現在の資源高、特に原油価格の急上昇が、ドルに対する不信任と裏腹の関係にあることに疑いを挟む余地はないと思われます。

ブラックマンデー、ITバブル崩壊、9.11ショック。
全ての「危機」に対してFRBは潤沢な流動性を供給することで対応してきました。

「我慢ではなく放漫」を選んだと言っては言い過ぎかもしれませんが、金融危機を回避するという名目によって常にバブルの種をまいているとも解せます。

こうして生まれた過剰な流動性は過剰な消費で海外に放出され、それをまた豊富な金融商品の品揃えによってアメリカへ還元させるという、ある種「綱渡り的なドルのリサイクル」によって、世界経済は軽いインフレ状態をエンジョイし、アメリカの放漫経営を支えて来ました。

しかしながら、こうした「リサイクルへの信奉」は、アメリカ国内において、金融サービス業への過度な依存を招き、製造業で働く健全な中間層が育ちにくくなっています。

70年代から80年代にかけて、日本企業はアメリカからカラーテレビや白物家電などエレクトロニクス分野の組み立て作業の機会を奪いましたが、90年代以降は、加えて中国が、アパレル、玩具、靴など、ありとあらゆるアセンブリ作業を世界から奪っていきました。

低所得者層が、機械工場等で勤勉に働いて少しずつアメリカ社会で生活の基盤を作り、子供には高等教育を受けさせることで家族全体がステップアップするという「それなりの成功ストーリー」は難しくなり、今では肉体労働に従事する人が増えています。

サブプライムローンを借りた人々として登場するのは、清掃員、介護士、運送業などが多い。

いわば「道具」を使った組立作業により、そこそこの収入を得られていた親の世代に比べ、今は裸の肉体を酷使した労働であり、そこそこ以下の収入に甘んじているのが今の世代。

今回のサブプライムローン破綻は、移民を中心とする低所得者層が、中流に這い上がるための雇用機会を与えられないという社会構造に、その遠因が感じられます。

金融とIT技術を駆使する高所得者層が不動産を独占、低所得者は高い家賃の負担でその日暮らし。
不動産は基本的にレバレッジプレイですから、一定の貯蓄が出来ないと、参加は難しい。

偉大なる中流層に支えられて黄金の50年代を謳歌したアメリカ社会は、その後の50年で見事に「中抜き状態」になり、不動産を所有できる層と、出来ない層との間に、大きな断絶が生じました。

今回は、その「断絶の川」を、証券化というボートで無理やり渡ろうとしたものの、沈没してしまったという構図にも見えます。

こうして裾野の広がりに失敗した不動産マーケットの調整は長引く可能性が高く、アメリカの消費への影響は避けられないのではないかと思います。

現段階で、その影響の程度を推し量ることは困難でしょうが、もしもアメリカの不動産マーケットが予想外に落ち込んだ場合には、海外マネーの動向が注目されます。

日本の地価も、反転のきっかけは、外資の買いでした。

無論、値段次第ではありますが、今「アメリカの将来を買う」という行為に賭ける人がどの程度いるかなあ、という気はします。


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Comments

興味深いエントリーでした。。米国衰弱は大きなトレンドだと思いますが、、、個人的には、、、米国のソフトには強気です。新興国といってもすぐに洗練されたソフトまで作れないでしょう(日本もまだまだそうですし)ということです。。。KO、TIF、PGあたりです。意外にこういう人多いように思いますが如何でしょうか?

Posted by: Blue | October 21, 2007 05:31 PM

コメントに気が付かず、RESが遅くなってすみません。

USAで生まれたグローバル企業の将来については、心配していません。

個人消費がGDPの7割を占める過剰消費社会、この歪な構造が、じわじわと痛んで来るだろうと思います。

Posted by: akazukin | October 24, 2007 11:37 PM

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