中東の壁が崩れていく
アジアでは、やはりマレーシアが、イスラム金融に関しては一歩リード。
今月31日には、マレーシア証券取引所に、アジアでは初めてイスラム金融方式のETFが上場します。
香港もイスラム金融の取り込みに積極的で、現在中東訪問中の曾蔭権行政長官は「香港はイスラム金融の受け皿になるべきだ」と語り、香港でイスラム債市場を発展させようとしています。
いつも出遅れる日本の銀行でさえ、三井住友銀行が、マレーシアの大手銀行グループRHBキャピタルに200億円の出資を検討していると報じられています。
これまでイラ・イラ戦争や湾岸戦争に代表されるように、イスラム諸国は、団結には程遠い状態でした。
安く抑えられた石油価格により、多くのイスラム諸国が経済発展から遅れた結果、開発を優先する親米派とそれを嫌う民族派に分かれ、国内を分断し、中東地域を分断して来ました。
しかしながら、裕福になったイスラム諸国は、アメリカへの依存度を大きく減らすことが出来ます。
今月はじめ、ブッシュ大統領は中東諸国を歴訪。
その目的は中東和平の促進とイラン封じ込めと見られていましたが、ほとんど何の成果も上げられずに終わりました。
それどころか、サウジのサウド外相はイランについては「域内の重要な国であり、サウジはイランに悪意を抱いていない」と言明。
昨年12月に開催された湾岸協力会議(GCC)にはイランのアハマディネジャド大統領を招くなど、関係改善を目指すメッセージを発信しています。
そもそもGCCは、イスラム革命を起こした「イランの脅威」などを背景に、最親米派であるサウジアラビアを中心に6カ国が1981年に結成したものですから、親米サウジ中心の枠組みという構造自体が溶けつつあるのだと思います。
現在パレスチナ自治区ガザでは、ハマスによってエジプト国境にある「壁」が壊され、多くのパレスチナ人がエジプト東部ラファハに流入し、さながら解放区のようだと報じられています。
混乱を収拾するため、エジプトは壁の閉鎖を試みましたが、ガザ住民と衝突の懸念が高まったため、現時点では容認に転じたと報道されています。
壁が壊される2日前の21日、イランのアハマディネジャド大統領とエジプトのムバラク大統領は電話でパレスチナ自治区ガザへの支援を巡って話し合ったと報道されていますが、イランとエジプトが直接話し合うのは、1979年の両国断交以来初めてのことです。
北東アジアで無法者の北朝鮮を取り込む動きが活発であるのと同様に、中東では暴れん坊イランを取り込んだ安全保障の考え方が、急速に支配的になっているように思われます。
イスラム圏、アラビア語という共通項が重視されれば、ブッシュ大統領が意図したイラン包囲網どころか、アラブによるイスラエル包囲網が出来上がるかもしれません。
中東地域におけるアメリカの影響力低下は、イスラエルとパレスチナ地域の緊迫の度を高め、石油価格にも影響が出るでしょうが、一方アメリカ国内でのイスラエル支持政策の見直し気運に勢いが付くかもしれません。
世界におけるアメリカのプレゼンスの低下は、中東地域においては、イスラエルの覇権の弱体化として現れるでしょう。
私は、こうしたパワーバランスの変化が、中長期的にはイスラエルの譲歩を引き出し、パレスチナ地域の安定に結び付く可能性の方が高いのではないかと期待しています。
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Comments
米大統領がサウジへの武器売却計画の推進方針を明確にしたとのニュース(1月15日)を目にしました。
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnTK810080720080115
アメリカ政治に影響を及ぼすイスラエルが懸念を表明していることからも、米大統領の強引さがうかがえます。
サブプライム問題の悪材料が出尽くして今年後半に株価回復の可能性を予想する経済評論家でも、アメリカがイランへ戦争を仕掛けたら、ドルは暴落、世界経済は大混乱に陥ると予想しています。
http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/o/115/
戦争だけは避けるべきだと思います。
Posted by: | January 27, 2008 09:20 PM
全く強引ですね。
気前良くアメリカから武器を買い、駐留している米軍に傭兵よろしくサウジ家を守ってもらうというのが、これまでの構図ですが、イランが脅威とならなければ、国内での反サウジ家勢力対応という課題は残るものの、このピクチャーは大きく変わる可能性があるように思います。
Posted by: akazukin | January 28, 2008 08:16 PM