消費が増えない日本
昨年12月に運賃を引き上げた東京地区のタクシーは、1月の1台あたり営業収入が前年同月比2.1%の減少。
伊豆地区では値上げに踏み切る会社が半分に減り、複数運賃が混在する異例の事態になっているようです。
1月の百貨店売り上げは、タクシーと同率の前年同月比2.1%減。
特に宝飾品関係はマイナス6.8%と、株価下落の影響は高額品の消費にストレートに現れました。
内需が弱い日本は、円高になると風俗店までも不景気になると言われています。
日本人の貯蓄好きに関しては、農耕民族の特徴であるとか、銀行の過剰な預金獲得競争の結果であるとか、様々な仮説がありました。
戦後の日本は、急速な工業化、都市化が進む中でいわゆるドーナッツ現象が進行。
私鉄企業や民間デベによる郊外開発を背景に、政府は金融公庫による長期ローンやローン控除などの税制面で住宅取得を支援し続けて来ました。
企業も優秀な社員を拘束し、かつ資産形成を促すため、社宅より持ち家政策を重視。
低利の社員向け住宅融資制度の拡充に走りました。
小規模の土地には相続税上の優遇措置もあり、国民は競って住宅をローンで購入。
最終返済が80歳のローンが平気で実行されます。
反面、賃貸住宅は質的な向上が図られず、良質の住宅を求めるなら分譲しかないという歪んだ構造になりました。
私は5年前大阪から東京に戻った際、田園都市線沿線で賃貸マンションを探しましたが、質の高い分譲賃貸は本当に少なく、賃貸専用マンションは設備が極めてプアーであることを実感しました。
多くのサラリーマンは年収の5倍という巨額の不動産投資を強要されたため、金銭的余裕が無くなり、投資の勉強をする意欲を失い、家計は主婦任せ。
消費を我慢し、ローンの支払いに励んだ結果がバブル崩壊。
不動産価格の下落とゼロ金利時代の長期化で家計の消費パワーは大きな打撃を受け、いまだに治癒仕切れていないと考えられます。
今現在働き盛りの日本人に取っては、自分自身の健康や年金不安に加えて、介護の問題が経済的・精神的な負担になっています。
中年リーマンの飲み会は、健康と介護の話題になると、時間を忘れて盛り上がるのです。
そもそも定住と安定を求める日本人は、不確実な将来を必要以上に恐れる体質があります。
日本の近代化は、徳川300年の太平が覆され、植民地化を防ぐための危機感から一致団結して進んだと考えられますが、「安定が脅かされる」というフレーズは、今でも企業買収への対抗心を一瞬でまとめるのです。
個人金融資産は、おおよそGDPの3倍ありますから、金融資産の0.3%が消費されるだけで、GDPは1%上昇しますが、様々な将来不安は消費を抑制します。
「信頼」を提供出来ない政治は、国民を現金の「信用」に走らせ、それが日本経済を硬直させて変化への対応力を損ない、海外投資家がマネーを引く原因を作り出しています。
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