商品高騰がアメリカを救うのか
株式市場のパフォーマンスが悪いため、年金系ファンドを含め、多くのマネーがオルタナティブ投資の比率を積極的に高め、投機的な価格を形成しているとの警戒した見方もあります。
膨張した金融資本の暴走がコストプッシュ型インフレを招き、スタグフレーションに向かうという悲観的な予想が、さらに株価を弱めていく可能性もありそうです。
一方、そもそもアメリカ経済への悲観が行き過ぎているからこそ、商品は上がっているとの見解もあります。
米国経済は金融業界が大混乱に陥り、不動産市況は無謀な融資による上がり過ぎの反動から大きな調整時期にありますが、小売売上高が1月はプラスに転じるなど底堅い指標も見られます。
中国の経済成長は依然二桁近い数字が見込まれていて、世界的に資源、商品の需要はタイトですから、商品価格上昇には合理的な背景があります。
もちろん価格が上がれば生産も増えるはずなので、穀物供給の将来に楽観論もありますが、食べるものに関しては、楽観していて悲観的な結果になった時に取り返しがつかない、という事態も有り得るので、どうしても悲観が優勢になるという傾向もあります。
鉄鉱石供給の寡占が進み、日本の鉄鋼業界が65%の値上げを飲んだように、現実は供給サイド有利に動いています。
1月の日本の貿易統計を見ると、日本からの輸出は全体の2割を占める(2割しかない?)米国向けが3%減少したものの、EUが+10%、アジアが+8%で全体では+7.7%。
これを見る限り、アメリカ以外の需要は堅調で、デカップリングしています。
原油高騰はアメリカ経済にマイナスには違いないのですが、債務国であるアメリカに取っては、世界全体がデフレ傾向になることの方がむしろ心配で、商品価格上昇によるインフレはむしろ債務負担が軽減されて有利に働く、という大きな視点も、一つの見解には違いないと思われます。
この記事が参考になりましたら BlogRankingに一票をお願いいたします。
Comments
今は明らかに先進国における逆業績相場なので、世界的な経済モメンタム低下を織り込むべく商品相場は軟調になる「はず」なのですが・・・、このような従来の理屈を超えた商品高騰をどう捕らえるべきか、とても難しい現象ですね。
ただ、「商品高騰」が「アメリカ経済への悲観が過度」である示唆であるならば、アメリカの株式が素直に反応すべきだと思うんです。したがって、この要因が成立したとしてもそれだけではないと思います。
一方、新興国も経済モメンタムがかなり低下するだろうと判断されているならば、ソフトコモディティはともかく、工業用コモディティの高騰はもう説明がつかないことになります。ドル不信だとしてもかなり行き過ぎだと思います。
そうすると・・
Bricsの経済予測や各種経済指標を併せて鑑みると、商品高騰はデカップリング予測がマジョリティである示唆と思うんです。Bricsの株式相場がそこまで織り込まないことだけがわかりずらいですが、これが成り立つならいずれBrics内需を中心に「沸騰相場」がくるはずと思います。
今は先進国の冷風がどの程度Bricsを冷やすかをじっと様子見している、そんな風景だと理解しています。その中で冷やし加減にあまり関係なくモメンタムの中長期上昇が見込まれるソフトコモディティが先んじて沸騰しているような気がします。もし連動性が高いとなれば特に工業用コモディティは相当落ちると思いますが、今のところ、ややカップリングして多少落ちる程度だろうと思っています。
それにしても怖い相場です。世界の体温が先進国のみならずBricsという組織で決まるとなると、
成長しない先進国はゆるやかに「恒常的なスタグフレーション」に向かっていく気がします。筆頭は日本でしょうね。
Posted by: Blue | February 24, 2008 08:36 PM
産業革命から200年を経ても、工業化に成功した国は全体から見るとごくわずかであり、世界は少数の先進国国民と無数の開発途上国国民で構成されていました。
中東地域に代表される資源持ち途上国は、安い価格で売ることでしか生活が出来ませんから、先進国から見ると、1次産品は何時でも安く手に入るのが当然。
資源の権益を気にせずに、ひたすら加工技術競争に明け暮れ、日本が勝利しました。
今や中国が工業化に、インドがソフト産業で成功しつつあるため、中産階級の圧倒的な増加が見込まれるという状況になり、世界は1次産品を必要とする多くの先進国・新興国と少数の1次産品供給国で構成されるようになってしまい、需給のパラダイムが完全に転換する事態が起こりつつあるのです。
といった感じのストーリーが、投資家に響く時代でしょうか。
Posted by: akazukin | February 24, 2008 09:44 PM