鈍感大国日本
経済産業省の次官が、これほどまでに経済の基礎知識に欠けていたという報道は世界に衝撃を与え、8日の日本株はまた200円ほど売られました。
参考:池田信夫BLOG
円高時代に海外移住プロジェクト(シルバーコロンビア計画)を推進した彼は、為替相場は大きく変動するということさえ知らなかったのですから、無理もありません。
さぞかし今の地位が重荷であろうと同情しますが、そうした人物が間違って責任あるポジションに選ばれてしまうシステムが問題で、このシステムでは、次の愚か者がまたその地位を引き継ぐのです。
「国が主導して新しい時代を切り開く」という考え方が既に陳腐化していますから、経産省(旧通産省)は、大分前から、もはやするべき事が無いものと推察します。
文部科学省は「ゆとり教育」を巡る混乱を引き起こし、教科書問題では沖縄戦での軍関与を偽装しようとして沖縄県民の逆鱗に触れました。
厚労省は「お粗末社会保険庁」を一切コントロールできずに放置し、医療費削減に走る余り、真に必要な医者までも削減してしまいました。
農水省は「農業の育成」のためと思って「農家の過保護」に偏り、食生活の変化にも対応出来ずにコメ政策は右往左往するばかりで、食料自給率は1965年の73%から今は39%。
長期的な国益の実現という観点から及第点を付けられる官庁が無いのなら、せめて民間企業の邪魔だけはしないように、最低限の事務組織だけ残して解体すべきでしょう。
戦後日本経済があまりにも素晴らしく回復したため、それを指導したかに見える経済官庁が過大評価されただけで、実態は、民間が頑張り、官僚や政治家に知恵を付けただけではなかったのか。
こうした日本を海外がどう評価して来たのかは、対内直接投資に現れます。
経産省のHPで2000年度の数字になりますが、直接投資残高のGDP比の比較が載っています。
残高ですから累計の動きを反映しています。
日本1.2%、米30.1%、英34.1%、ドイツ12.0%、フランス16.7%、カナダ25.3%、豪31.2%。
まさに桁違い。
M&Aはお断り、外国人は指紋採取、介護関係の労働者受け入れにも極めて慎重。
短期の観光客だけおいでください。
官僚中心鎖国体制を取り続ける日本を抜本的に変えることが出来ない現支配層(小泉さんでも無理だった)と、真に改革を求める若い世代との認識ギャップは益々大きくなっているはずです。
しかしながら、解決に向けた摩擦さえまるで感じられない「鈍感大国日本」は、これからソニーなどグローバル企業と才能ある人材の国外流出が本格化し、長い長い混迷と衰退の道を辿ることになることでしょう。
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Comments
さすがにこのニュースには衝撃を受けました。なんていっても経済産業省の次官の発言ですから、国内外へ与えるネガティブインパクトは計り知れません。株安どころの騒ぎではない、わが国にとって相当にまずい発言だと思います。
企業の前線に立つ身としての実感ですが、世代間格差は利益偏配よりもむしろ意識格差のほうが激しいと感じます。そしてその格差を埋めることの困難性を見抜き、解決に向かうための摩擦が無駄であること感じて、意識の上で別れを告げている、そんな実態です。
おもしろいことに30代の同世代内でも意識差が激しく、優秀な若手中堅ほど日本の支配層に背を向け意識は海外にあります。グローバル企業はこのような人材の囲い込みをしっかりすすめているように思いますし、同時に、そのような人材は独立自営の道や海外優良資産への投資も進めています。どころが一方、国内にしか目がいかない多くの同世代は漫然と生活し、その割には将来への不安を抱えているようです。
日本の歴史を紐解けば意識の差は衝突と改革を生みそれなりに前進してきたことが理解できます。このような顕著な「同床異夢」現象は史上初めてではないか、、そんな気さえします。
Posted by: Blue | February 09, 2008 01:24 PM
おっしゃる通りで、外から日本のポジションを眺めている人と、内向きだけになっている人との問題意識がかけ離れているため、「議論は無駄だよグッドバイ」になっている状況かと思います。
幸いにして、私が社会に出た80年代と比べれば、あちこちに海外への風穴が空いていますから、意識ある人々は日本脱出に備えた準備を着々と始めることが出来ているのでしょう。
これだけ大きな認識ギャップが過去にあったとすれば、それは本土決戦を主張する狂人的陸軍トップと、それでは国家復興の芽さえ潰してしまうと考えた他の政府首脳(含む天皇)との間でしょうか。
Posted by: akazukin | February 09, 2008 06:08 PM
先日はお世話になりました。今後とも宜しくお願いいたします。
次官の講演議事録(1月25日)を読み、AKAZUKINさんとはやや違う感想を抱きました。経済には疎い小生の愚見ですが、下記を参照していただけると幸甚です。
youtube と言うサイトで『戦略情報研究所(動画7本分)』 アマゾンにて『拒否できない日本』GOOGLEで『造幣局 民営化』をご検索ください。
Posted by: code geass | February 10, 2008 09:45 AM