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May 12, 2008

日本の「安心」はなぜ、消えたのか

日本の「安心」はなぜ、消えたのか―社会心理学から見た現代日本の問題点

2月の出版ですが、最近になって読みました。

そもそも日本人は個人主義的であり、アメリカ人よりも人を信頼しない傾向が強い、という説が、実験と観察により語られていきます。

閉鎖的ムラ社会では、相互牽制と監視により、「安心」が維持されていたため、わざわざ「ヨソ者」と信頼を築く必要がない。

そのビジネスコストの低さが高度経済成長の原動力だったという主張には説得力があると思います。

我々が日本人らしい奥ゆかしさ、と思っているのは、全て社会に対応するため、その方が良く思われるだろうという処世術であり、戦略的な行動だと分析されていきます。

また、モラルは、市場論理重視の商人道と、統治重視の武士道とに分類されるとされます。

商人道は開放的で、競争と効率を追求。

武士道は規律と名誉を重んじ、復讐を認めます。
死刑を認めるのは、武士道的な統治の論理が強い証拠でしょう。

著者は、日本は商人道に向かうべきだと論じますが、その実現性には悲観的です。

品格、道徳教育ブーム、「KY」など、古い価値観である武士道主義が、依然として強い勢力を占めているからです。

形式美を完成させる過程を通じて強さを目指す、日本の求道的で一途な姿勢は、他方で個性と柔軟性の欠如でもあり、例えば1本にこだわる柔道が最近通用しないように、転換を求められています。

そもそも権力は、監視していないと堕落するものですが、日本人は権力の無謬性を根拠無く信じるナイーブさを美しいと考えます。

プロに全てお任せ、という潔さが日本人の美意識に合致するのですが、政治とは汚れたものです。

自らを改革し続ける企業群と、既得権に執着する官僚との権力闘争は、商人道と武士道が最終戦争へと向かっている姿なのかもしれません。


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