« アメリカは何を売る国なのか | Main | 日本の「安心」はなぜ、消えたのか »

May 10, 2008

なぜ原油価格は上げ続けるのか

ユーロドルは先月瞬間的に1.60に到達しましたが、現在は1.55弱。

ゴールドは調整中。
ドルインデックスは下げ止まりを試行中。

ドル崩壊シナリオは小休止中といえそうですが、原油価格の上昇は止まらず、9日のWTIは一時126$台。

原油独歩高の様相を受け、投機ではなくこれはファンダメンタルだとの意見も強まっています。

投機資金の流入と新興国需要による需給の緊張。

それは他の商品にも言えるはずですが、なぜ原油は特別強いのか。

そもそも金本位制を捨てて管理通貨制度になったということは、通貨の裏付けが、金から信用になったということです。

日銀のバランスシートを見ると、発行銀行券(77兆円)が負債に計上され、資産のほとんどは国債(67兆円)です。

通貨は国の負債で裏付けられています。

私が銀行で5000万円借りて不動産を購入すると、マネーが増えます。

銀行が、私は将来5000万円を返済できるだろうと信用を与えるということは、一定の税金も払えるだろうという意味であり、国債が増える根拠となり、国全体の負債が増えます。

「信用を与え、信頼を受ける」という人間心理に基づいた相互関係の増大が経済を膨らませていくのです。

ドルの場合も同様に、通貨発行は米国債の増加を意味しますが、ドルは原油購買力に直接リンクしていた分、裏付けが強かった(少なくとも過去は)といえます。

円は自由にドルに変えられ、ドルで自由に原油が買える。
原油の需給関係に守られる形でドルの価値は維持されました。

ところで、信頼が経済を成長させるのなら、一体今の世界経済に適正な通貨量、即ち信頼関係の絶対量はどのくらいなのか。

世界の金融資産総額は、1995年からの10年間で53兆ドルから120兆ドルに増加し、この間、世界のGDPは26兆ドルから35兆ドル。

このアンバランスはなぜ生まれたのか。

もしもマネーサプライの増加に従って全資産(含むサービス)に価格調整(インフレ)が起こるのなら、そもそもGDPと金融資産の比率は一定でも良いはずです。

1995年に概ね2:1だった金融資産の対GDP倍率が3.5:1にまで増大したのは、おそらく金融取引に関するレバレッジ効果でしょう。

例えれば、家賃20万円で4000万円のマンションが、家賃は同じなのになぜか6000万円で取引されるようになってしまったようなものでしょう。
実物取引での信用供与に比べて、金融取引上での信用供与のバリアが緩くなったのです。

世界は金融取引を信頼し過ぎたため、サブプライム問題も起こったと考えられます。

膨張し過ぎた金融資産を見て、皆が不安に駆られました。

通帳にゼロが7桁あっても、インフレで次第に目減りしていく不安に襲われます。
資産家ほど、わずかを失うことに恐怖を覚えるものです。

株式を買えば買うほど、ヘッジ需要での原油買いも増えます。

今後原油は200$になるかもしれませんし、50$に戻るかもしれません。

マネーに実体があるとも無いともいえるのと同様、将来の原油の需給も強いとも弱いともいえると思います。

今はまだ強いと考える人が多いのでしょうが、市場心理は一瞬で反転します。

有り余る金融資産が、その拠り所を求めてどこに向かうのか。
それを決めるのは、我々が一体何を信じて行動するのか、だけだと思われます。


この記事が参考になりましたら BlogRankingに一票をお願いいたします。

|

« アメリカは何を売る国なのか | Main | 日本の「安心」はなぜ、消えたのか »

Comments

大変勉強になります。

「我々が一体何を信じて行動するのか」という点ですが、究極は食医だと思うんです。私は製薬メーカーの会社員ということもありますが、Brics中流階級が爆発的に増大するところまでは衆目一致していれば、ヘルスケアは人間の究極欲ですから、ここははずせない気がします。。

ただ、治療よりも予防、薬よりも医療機器が、投資上は堅い気がします。なかなかこの感覚を簡潔に説明することは難しいのですが(笑)。。

あと日本の環境(気候、水、治安など)は素晴らしいと思いますので、環境重視のトレンドを考慮すると、、いずれ日本不動産は外資にガンガン買われて全般的に上昇していく可能性もあると思っています。このアイデアはあまり万人受けしませんが。。

Posted by: Blue | May 11, 2008 11:55 PM

いつも的確なコメントありがとうございます。

おっしゃるように、四季の変化と「水」が溢れる日本の国土は割安だと思います。

聞いた話ですが、このGW、箱根の高級旅館には中東からの観光客が目立ちました。

彼らから見れば、原油より高価な水をじゃぶじゃぶ使える「源泉かけ流し」は究極の贅沢で、1泊5万円くらいは、ただ同然に感じるでしょう。

アートな和食、24時間使える部屋付き露天風呂、チップ不要のメイド、外には深い緑と渓流のせせらぎ。

ドバイのバージ・アル・アラブに2000$払うのと、どちらが満足感が得られるか。

自然美の味わい方に関して言えば、日本人は世界最高の職人ですから、倶知安のような地価上昇が次々と現れる可能性は十分にあると思います。

「水利」が不動産の価値を決める時代がいずれ来ると思います。

Posted by: akazukin | May 12, 2008 08:57 PM

Post a comment



(Not displayed with comment.)




« アメリカは何を売る国なのか | Main | 日本の「安心」はなぜ、消えたのか »