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July 11, 2008

日本人と水

昨日は栗田工業を打診買いしてみましたが、世界の株式マーケットは今後の世界景気後退シナリオを十分に織り込んだとは言えず、当分は神経質に弱含みで推移しそうに感じています。

G8は42年先の曖昧な約束は可能でも、直面するドル安に対しては、ほとんど無力。
「モノ」を持つ者への羨望が強まる市場に対し、「カネ」を持つ者たちは口先で牽制するだけでした。

さて、次なる戦略資源は「水」と言われています。

日本は水田風景や温泉に代表されるように、水の恩恵を得られた国と考えられています。

年間降水量は約1,800mm。
世界の平均は約1,000mmですから多雨地域に分類されるでしょうが、人口が多いので一人あたり降水量は世界平均の約4分の1です。

また、蒸発によって失われてしまう分を除いた水使用可能量である「水資源賦存量」は、一人当たりでアメリカの3分の1、オーストラリアの6分の1程度。
フランスやイタリアとは、ほぼ同じ。

全般的にアジア、ヨーロッパは人口密度が高いため、一人当たりデータでは南北アメリカ大陸よりも不利な立場にいます。

なお、日本と中国の一人当たり降水量はほぼ同じ。
水資源賦存量で比較すると、日本が中国の1.5倍程度です。

最近「仮想水(ヴァーチャルウォーター)」という言葉が良く聞かれます。

日本は大量の食糧を輸入しているから大量の水を輸入しているのと同じという考え方ですが、ある試算によれば、日本の仮想水の総輸入量は約640億立方メートル/年で、日本国内での総水資源使用量約900億立方メートル/年の3分の2にあたるそうです。

これが正しければ、日本が食糧自給率を高めていくためには、国内での水確保が大きな課題となりそうです。
もっとも、かつて食糧自給率が高かった時代に、それだけ水不足だったかというと疑問なので、この辺の相関性は不明です。

日本の水利用の歴史は、言うまでもなく稲作と切り離せません。
江戸時代においては「治水工事」と「新田開発」の成否が、各藩の財政基盤を決めたといっても過言ではないかと思います。

ヨーロッパでは、日本ほどの急流は少なく、また台風の到来もさほど多くないため、低地の多いオランダを除くと治水工事が発達した国はないようです。

明治時代、日本はオランダから治水技術者を招いてその技術を取り入れましたが、オランダの技術者が初めて常願寺川を見た時、「これは川ではない。滝だ。」と言ったとされています。

日本はオランダの堤防技術などを取り入れましたが、穏やかに流れるヨーロッパの河川に対応した技術だけでは不足であり、その後は放水路の構築など日本独自の工夫が施されました。

「ゆったりたっぷりと流す」欧州に対し、「素早く海に流す」のが日本流となったようです。

こうした長い経験を通し、日本が治水のために、多くの知恵と資金を投下し、技術を蓄積してきたことは間違いないと思います。

水の味についていうと、日本の川は軟水。
流れが早いだけにミネラルの吸収が少なく、「飲める水」です。

従って日本では「水はおいしく飲めるもの」という考え方が強く、近代の水道事業は、井戸水に負けないくらい(?)「飲める水、おいしい水」を供給して欲しいという高度なリクエストに向かって努力してきたものと考えられます。

日本の料理が、「煮る、炊く」中心に発達してきたのも、やはり良い水があったおかげ。
また、良い日本酒には良い水が欠かせませんが、これも豊富な地下水、伏流水の存在を前提にした製法といえます。

ワインはぶどう自体に含まれるブドウ糖と水分を使って発酵させるので、何といっても葡萄そのものの品質が勝負。
育った畑、生産年とヴィンテージがモノを言い、悪い葡萄からは良いワインは生まれないという「出自主義」です。

コメには糖分が少ないので、麹(こうじ)を使ってデンプン質を糖化します。
「一、麹。二、酛(もと)。三、造り。」と言われるように、良い麹を作る技術が問われます。
無論、コメが良いに越したことはないでしょうが、原料の品種よりは酒屋の技術とブランドがより重視されているように思います。

清涼な水が湧き出る地域が多いという環境が、日本の食文化を今のような形に発展させました。

こうしてみると、日本は意外にも量的には水に恵まれているとはいえないものの、知恵を働かせて急流河川と向かい合うと同時に、水で料理する、水を使って酒を作る、という水に根ざした食文化を伝承して来たように思います。

自然との共生を基本とし、「創意工夫」と「質の追求」に熱心な日本人の特徴は、こうした水との係わり合いの中でDNAに刷り込まれてきたのかもしれません。


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Comments

日本料理では、もうひとつ『生』で食す文化も瑞穂の国日本の特徴でしょうね。水が良くない中国では料理に必ず火を通さなくてはなりません。生水を飲む習慣すらありません(実体験)

自給率は、食生活を米・魚・和食中心に戻すだけで20%~30%上昇も可能だそうです。

日本は『冷戦思考』から抜け出さないと、近い将来大変な目に遭います。いまの六カ国協議も『日本に核武装させないため・金を出させるため』の道具ですから。

中国とキッシンジャー、父ブッシュによる日本封じ込め /青木直人http://jp.youtube.com/watch?v=gSWckoKjUUc&fmt=18

中国による日本の富の収奪計画と大・東アジア再建計画/青木直人
http://jp.youtube.com/watch?v=X9RId8aou9A&fmt=18

Posted by: code geass | July 11, 2008 08:03 PM

食料自給率は、金額ベースでは68%、コメの自給率は94%です。
おっしゃるように、食習慣の工夫によって相当程度解決可能な問題であり、そもそもコメ大好きの私は楽観しています。

Posted by: akazukin | July 11, 2008 08:22 PM

 どうも、お久しぶりです。

 日本の水の歴史は目からうろこでした。
 勝手に日本は水資源豊富な国だと思っていました。
 かつて食糧自給率が高いときに、水が足りたのは人口が少なかったからでしょうか?

 ところで水関連銘柄と言われている株は他にもたくさんあると思うのですが、なぜ栗田工業を買ったのでしょうか?
 もし、よろしければ教えて下さい。

 個人的には水問題は起きそうだと思う半面、水がお金になるのか?という日本人的思考と水問題に対して実現性のあるソリューションをそれらの企業が出せるのかというのが疑問でちょっと実際の投資は躊躇しています。

Posted by: みかん | July 12, 2008 12:55 AM

1960年、食料自給率(カロリーベース)も穀物自給率も80%でした。
昔は人口が少ないから水が足りていたということではなく、近海で取れなくなった魚を北欧から輸入したり、南米で養殖したり、コメばかり保護するので他の農作物を輸入に頼ったりという現代の食料供給のあり方が問題なのではないかと思います。

栗田は一応水処理ではNO1といわれてますし、全体が下がったので、少し持ってみても良いかと考えただけです。
割安とは思いません。

おっしゃるように、水というテーマが大きなビジネスに繋がっていくのはまだ先かと思います。
日本の環境関連技術という息の長そうな物色の中で底堅いかどうか、というくらいの感じでしょうか。

Posted by: akazukin | July 12, 2008 08:37 AM

長期保有の押し目買いというこでしょうか。
確かに長期的に持つなら、無難にシェアの高い企業を抑えたほうがいいかもしれませんね。
栗田工業の解説ありがとうございます。

Posted by: みかん | July 12, 2008 12:56 PM

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