人間はデフレの恐怖に耐えられるのか
今週号の日経ビジネスに掲載された、プリンストン大学教授ハロルド・ジェームズ氏の「デフレと民主主義の脅威」という記事は、今後のワーストシナリオを考える上で、大いに示唆に富んでいると思いました。
記事の要旨は以下の通り。
金融の歴史とは価値を図る歴史。
供給量の調整が難しい金貨・銀貨の制度に代わり、貨幣を中央銀行が管理するシステムにより、経済は安定してきたが、再び金融は機能不全に陥り、価値の測定が出来ない状態にある。
デフレが危険なのは、金利をゼロ以下に出来ないため治療方法に限界があることで、債務の価値が次第に大きくなって、人々は苦しむ。
その苦しみから逃れようと、国家の介入を望むようになるが、誰を助けるかという政治判断は激しい論争を呼び起こす。
過去の大恐慌の時には、中央ヨーロッパとラテンアメリカでデフレへの政治的反応から幾つかの民主主義政権が崩壊した。
国家に頼るという手法には大きな弱点があり、その嫌悪感が市場そのものへの敵対的行動を誘発し、結果的にあらゆる政治経済システムへの深い敵意を醸成する危険性がある。
GMを助けるべきだとは全く思いませんが、時として合理的な判断が政治的な混乱を巻き起こし、収拾がつかなくなることもあります。
過剰な金融資産を「正常化」するために、最も効果があったのはリーマンの破綻ですが、この処方箋をもう一回選択することは政治的に不可能。
かといって痛みを避けてばかりいれば、問題が先送りされるだけ。
もしも10年デフレのような状況になった場合、世界は日本人ほど我慢強くないでしょう。
人間の理性が恐怖に耐えかねて安易な解決方法に流れて行きやすいこと、そしてその結果がさらに大きな不幸をもたらすことは、歴史が繰り返してきたとおりです。
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Comments
十字軍が再登場するか。
Posted by: yoinokuchi | February 03, 2009 10:33 PM