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March 29, 2009

壮大なるインフレ実験は終わらない

今回のような大きな金融クライシスを分析するには、最低でも30年程度のスパンで考えないと本当の意味は分からない、となぜ世界は不況に陥ったのか 集中講義・金融危機と経済学 の中で池尾和人先生が語っています。

1980年を100として、DOWと日経平均を比較し、ケースシラー指数を87年からDOWに重ねたグラフです。
Dow

米国株の上昇率はケースシラー指数を上回っています。

過剰なローンで作られた住宅バブルよりも、株バブルの方が異常なのです。
日本のバブルなど、この壮大な波に比べれば「さざ波」のようなもの。

この長期的な株価の「膨張」がアメリカの楽観主義とバフェット的投資手法を支え、一方日本では長期投資で利益が出ません。

経平均の水準は30年前の2割アップ程度です。
グラフにはしていませんが、東京圏の公示地価も同じです。

日米株価は30年で、DOWが8倍、日本はほぼ変わらず。

確かに日本は低成長の国ですが、両国経済の実体成長率に8倍もの差はありません。

この違いは、米国の人為的な「資産インフレ」政策によって作り出されたものと考えられます。
常に過剰流動性の状態を作り出し、過剰消費によるドル建て負債を、値上がりした株と土地で担保する。
それが出来たのは、軍事力でNO1、かつ基軸通貨ドルを所有するという特権でした。

製造業で日本に負けたアメリカは、ドルを刷って軍事力を増強し、株価を上げてドルの資金繰りを維持しました。

不動産や株式を所有するアメリカの富裕層はインフレ効果で豊かになり、持たない層は実体以上に高い地代・家賃を負担させられるために貧困から抜け出せない。

この仕組みがアメリカの二極化の根本的な原因となっているので、多少あやしくてもサブプライムローンが貧困層の救世主に見えてしまう土壌がありました。

長期的な水準で見れば、アメリカの株も不動産も、さらに下げるべきなのでしょうが、一旦上がったものを無理やり下げると、日本と同じように長期のデフレに陥る可能性があります。

従って、理屈抜きの金融緩和、財政出動で無理やり今の水準から持ち上げてしまおうというのが、今の米国政権のコンセンサスになっています。

米国株がこの近辺で下げ止まるとすれば、それは再びバブルの芽を残すということですが、それは割り切って参加するしかない、と考える人が再び増えているようです。

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Comments

基軸通貨というインセンティブがどこまで許容されるかが試されている時だと思います。
これだけじゃぶじゃぶに米ドルを撒いても、『基軸』である以上、ジンバブエにはなり得ない。
嫉妬やジレンマを感じながらも、多くの国の我慢が今もまだ米ドルを支えています。

Posted by: anemone fish | March 30, 2009 11:46 PM

今はドル安を皆で分担し合うのも止むを得ない状態ですが、我慢するだけの日本、次を見て口と手を出す中国、距離を置く欧州、黙って資産をドルから移す投資家勢といったところでしょうか。

Posted by: akazukin | March 31, 2009 08:36 AM

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