加害者は外に居る
欲望減少時代への対応が最も進んでいるのは、毎日「自己責任」で買い物に悩む消費者です。
企業は正社員が解雇出来ないため、止む無く非正規社員で調整しようとしますが、そうすると社会的に批判を受けるので、その速度は緩慢です。
売上減少に対して人件費削減が進まない経営者のジレンマは、日本企業に求められるものが利益ではなく、雇用であることを端的に示しています。
若年層は高失業率と低所得で結婚できず、結婚すれば出産する場所がなく、子供を持つと小児科と保育所不足に悩み、中高年はリストラと教育費の捻出に脅え、高齢者は後期高齢者医療制度に感情的に怒り、郵政族は民営化を見直せと言い、農家は所得補償を要求。
日本人は全員が被害者になったようです。
日本の労働市場は、流動性よりも保護を優先した、最も「市場原理主義」から遠い存在ですが、皮肉にも、正社員を飼い殺し、そのコストを非正規社員へ負担させています。
私はそのおかげで失業しそうにありませんが、娘は職を得られないかもしれません。
市場を見れば新興国のキャッチアップ努力は一目瞭然ですが、身の回りに居る中国人やブラジル人は低賃金で働く出稼ぎ者ばかり。
迫られている実感が涌かず、国内の分裂を、国際的な競争による敗北ではなく、国内政治の責任として追及する声が主流になります。
日本はどの国と比較しても、さほど格差が大きい社会ではないでしょうし、歴史的に見ても、最も格差が小さいかもしれません。
にもかかわらず、社会の敗北者を救おうとする政治への要求は日増しに高まります。
これは大変立派なことですが、見方を変えると、自分で積極的に手を差し伸べるのは辛いので、嫌な事は全て政治へ押し付けているのかもしれません。
TVコメンテーターも政治家も、自分の地位への嫉妬をかわすため、誰もが庶民感覚を装い、格差問題へ真剣に取り組む姿勢を見せる必要があります。
従って、格差対策の議論は必ず「熱い討論」となり、日夜飽きずに繰り返されますが、「派遣禁止」も「ワーキングシェア」も「同一職種同一賃金」も、事実上一歩も進んでいません。
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Comments
こんばんは。
私は新興国の経済成長が顕著になる前から、先進国と新興国の人種の能力差などさほどないに決まっているだろうにかかわらず、両者で生活レベルに著しい差がでることに違和感を覚えていたことを思い出します。
企業のグローバリゼーションがすすめば、経済原理から、世界的な同一労働同一賃金を志向せざるを得ないフラットワールドになるに決まってるのにかかわらず、なぜこのような当たり前のセンスが世間で支配的にならないのか不思議です。
格差是正のためのもっとも効果的なお薬は経済成長に決まってます。世界がひとつになったこの現在で高いレベルを維持・拡大するためには「知識集約化」「資源権益獲得」の2本を強力に推進する必要があると思われますが、このような処方箋も、TVコメンテーターも政治家をみると、日本の一般のコモンセンスになっていないようです。
いつまでたっても分け前論と同情論が渦巻くこの日本をみると、昔の日本よりもそもそも質が劣化しているんじゃないかと思うほどです。
今の格差是正をめぐる「白々しい、馬鹿馬鹿しい、熱い討論」をみればみるほど、優秀な人材はタイタニックから抜け出す策に真剣になっていくように思います。
Posted by: Blue | July 26, 2009 08:32 PM
こんばんは。いつも切れ味鋭いエントリー、楽しみに拝見しています。
先ほどTVでTATA自動車のNANO特集をしていました。「我が街にNANOがやってきた!」とはしゃぐ子供たちの目は「いつかはクラウン」と走ってきたかつての日本人が重なりました。
グローバリゼーションが進めば進むほど、賃金水準の低い彼らには仕事は増え、我々の仕事は無くなる。民主党のマニュフェストでは、税金の配分方法が変わるだけで、仕事そのものが増える訳はありません。
政権が変わってもダメか・・。
当面は閉塞感や厭戦感がさらに蔓延する予感がしています。
Posted by: anemonefish | July 26, 2009 11:55 PM
Blueさん、anemonefishさん、いつも読んでいただいてありがとうございます。
日本はもう全体としての成長は難しいので、出来るだけ衰退を食い止めるための努力が必要かと思います。
その中には、道州制や税金の無駄遣い廃止、教育の強化などが考えられますが、そうした危機感は以前より明らかに高まって来ました。
民主党の実行力は未知数ですが、その主張には評価できる部分もあります。
本来の日本人の実力からすれば、もっと上手く出来るはずだと思って色々と文句ばかり言っていますが、ようやく本格的な変化の気運が生まれてきたことを素直に評価しても良いと思っています。
日本のサイレントマジョリティは案外賢いはずですから、選挙を繰り返すことで、成長と分配のシステムを今より向上させることは不可能ではないと思います。
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Posted by: akazukin | July 27, 2009 08:59 AM