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July 23, 2009

欲望の減少に対応していく日本資本主義

資本主義の先頭を走ってきたアメリカは、オバマという「修正液」で何とか乗り切ろうとしていますが、前任者の奔放のツケはあまりに大きく、その前途は多難と言わざるを得ません。

これまでの過剰借金体質を是正するためには貯蓄が必要で、貯蓄をすれば消費が減って需要が減退します。
米貯蓄率は15年ぶりの高水準
これはアメリカとドルの崩壊を防ぐ必然なので、全ての景気刺激策には自ずと限界があります。

資本主義は人間の貪欲さを肯定し、競争が生み出す生産性の改善により、全体の「物欲充足度」がレベルアップすることを目標としてきました。

しかしながら日本では、平成バブルで「消費の臨界点」を越えた後、国内で成長するフロンティア、飽くなき貪欲さなどのエンジンがパワーダウン。
束の間、ITバブルで「強欲ウィルス」が一部で猛威を奮いましたが、日本的潔癖症候群はホリエモンとムラカミファンドを抹殺して完全殺菌を行いました。

元々日本の資本主義は米国流に一定の味付けを行い、株主の権限を抑制し、雇用を守ることに重点を置いた社会主義的な「修正」がされています。
社会主義はコントロールタワーを必要とするので、官僚の権限を国民は認めてきました。

企業は家計という消費体への供給組織ですが、日本の成長時代に合わせて作り上げられた供給システムは大きすぎるので、それを縮小するための軋みが雇用の減少として現れます。

善悪はともかく、日本は全体として成長よりも公益性重視に向かい、市場では生活防衛銘柄の比重が高まり、欲望が縮小する際の経済的痛みを分かち合いつつ、需要減少による「デフレ坂」を下っています。

日銀が発表した先月の企業物価指数は前年同月比6.6%も下落し、1960年の調査開始以来、過去最大の落ち込み幅となりました。

J.ロジャースは、「日本は移民を受け入れるか、人口を増やすか、生活レベルを落とすかの、いずれかしかない」と言っていますが、我々は意識してかどうか、3番目を選択しようとしています。

日本人は、これを追い込まれた結果であると同時に、欲望縮小の世界で生き残るための「ダーウィン的変化」として受け止めようとしているように最近感じています。

村上龍は、石油危機も金融危機もAIDSの登場も、人間の際限ない欲望に対する警告という意味で共通だ、と語っていたように記憶しています。

神が欲望の縮小を望んでいるとしたら、それに対応することが世界のトップランナーで居続けることの条件である可能性もあります。

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