いわゆる鳩山論文について
これは寄稿だ、いや寄稿ではない、勝手な抜粋だ、いや訳したのは鳩山事務所だ。
その辺の真偽はともかく、
産経新聞の「外交評論家・岡本行夫 鳩山さん、よく考えてください」は、日本がアメリカへ宣戦布告でもしたかのような慌てぶりです。
各メディアで反米の象徴として引用されているのは、
「冷戦後、日本は米国主導の市場原理主義、グローバリゼーションにさらされ、人間の尊厳が失われている。
米国の単独行動主義の時代は終わり、世界は多極化に向かうので、アジア中心の経済・安全保障体制の構築が必要。」といった部分です。
雑誌「Voice」に載った原文はこちら。
原文は「友愛」という概念の説明ですから全体に柔らくは感じられるものの、基本は反グローバリズムの主張ですから、上記のように要約されても仕方がない文章だと思います。
但し、内容自体は、J・ロジャースやソロスが普段言っていることと大差なく、何の目新しさも感じなかったのが正直なところです。
ベトナム戦争以来、アメリカのミスジャッジのせいで多くの国が迷惑していることは歴史の事実ですし、ドルは弱体化、経済も軍事力も以前ほどのスーパーパワーではなく、世界のリーダーとしての「品格」にかけるのは明らかです。
日米経済を比べると、日本が10年以上ゼロ成長で停滞する間にアメリカ経済は1.5倍になっているとの見方もありますが、この成長はドル安と国内の格差拡大、テロ勢力の台頭という大きな犠牲の上にもたらされています。
そもそもアメリカ自身が米国一極主義に反省したからオバマが必要とされたわけで、時代の方向性が「友愛的なもの」であることは否定できません。
グローバリゼーションの負の側面を緩和する政策が必要なことは自明ですし、日本の地政学的な立場を考えると、自分自身の安全保障のためアジアシフトを検討するのも自然なことです。
但し、中国・韓国との関係は、そう簡単には修復できませんから、やはり重要なのは日ロ関係です。
日米関係でマイナスが生じるなら、その分ロシア関係で同じだけのプラスを取る覚悟が要ります。
アメリカにデカイ口を利くなら、北方領土は捨てて日露平和条約を締結するくらいの本気度が求められます。
写真は鳩山氏の長男の鳩山紀一郎氏。
東京大学工学部を卒業し、2007年からモスクワ大学の研究員として、モスクワ市内の渋滞軽減プロジェクトに関わっているとのことです。
そもそも祖父の鳩山一郎元首相が1956年の日ソ共同宣言に署名した縁もあり、由起夫氏自身も日本・ロシア協会の会長です。
今まで両足ともアメリカにあるとしたら、今後は片足をアジアに置く方向で検討するのは、ほとんどの日本人投資家がとっくの昔に気が付いているポジションですが、案外アメリカ人投資家はアジアシフトが遅れているのかもしれません。
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