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September 05, 2010

強いドルはいつ実現するのか

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アメリカは長く「強いドルがアメリカの国益」と標榜して来ました。

しかし、これを馬鹿正直に受け止めているのは、「疑わない教育」を受けた日本人の一部くらいのものです。
円は360円から85円になり、FRBドルインデックスは1980年代当初から2割安くなっています。

赤字国アメリカは、ドルを海外から還流させる必要があるので、国益に沿う強いドルとは「アメリカの磁力に引き付けられて本国へ戻ってくるドル」です。

即ち、「Strong Dollar」とは、実力以上に"高く売れるドル"と理解すれば納得です。

米国政府は巨額の負債を有していますから、多額のドルを運用するのに十分大きく、魅力的な債券市場を運営しています。

「魅力的」とは、必ずしも高い金利ではなく、多様な商品がある綺麗なショーウインドー。
着飾ってお洒落に見える陳列が必要です。

米国内に還流されたドルは、再び外へ出て高い利回りで運用されることが「国の利益」です。
そのためゴールドマンサックスを筆頭に、証券会社に優秀なる頭脳が集められ、強欲な運用競争を行って来ました。

証券会社はインベストメントバンクと呼び名を変えて国際信用度を高め、夢のあるストーリーを演じるための舞台をグローバルに探しました。

85年のプラザ合意以降、まずは日本の株と不動産、その後は世界的なITバブル、90年代は米国株式市場。
9.11以降は、ユーロを讃え、原油枯渇を訴え、BRICSに光を当て、最後には自国の住宅市場で大宴会を踊りました。

グリーンスパンも協力。
難解な表現を駆使し、人々に意識させない程度に緩和姿勢を維持し、じわっとしたドル安によって借入れ負担を軽減させました。

最近では、円と人民元に対してドル安を誘導しようとしていますが、中国が頑として言うことを聞かず、円はその分の負担も強いられています。

アメリカは歴史上初めて自分のコントロールが効かない「経済大国」を迎え、ドル安バブルのストーリーを上手く広められずに苦しんでいます。

このまま手詰まりしてしまうと、海外勢によるドルの人気は低下、これまでのように上手く回転しなくなり、大量に発行された紙幣がアメリカ国内の債券市場に沈殿します。

その場合は日本の実例が示すように、金利が低下しても将来悲観から消費マインドは停滞し、長期のデフレによって物価が下がり、ついに本当に「強く高いドル」が実現するのかもしれません。

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経済・政治・国際 |

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Comments

強いドルはいつ再現されるか?とても難しい問題ですね。仰るようなストーリーはある意味合理的推測と思います。

この世紀はアジアの世紀だと確信する私ですが、米国については、悲観もなく楽観もせず中立です。

1)流入と高い出生率からくる人口増加傾向
2)googleやappleのような金融以外のIT・医療等における高いイノベーション力、
3)経済的成功への希求力、
4)強い自由資本主義の傾向、
5)世界への門戸開放性、

など経済的視点からみて他国と比べても十分魅力的のように感じます。米国は暫くは停滞するでしょうが中長期的には彼らの”野生”を発揮するはずだと思っています。

Posted by: Blue | September 05, 2010 06:48 PM

アメリカ経済がしなやかな柔軟性を持っていることは疑うべくもありませんが、世界の重心が東に移り、金融業に多くの規制がのしかかる結果、これまでのような成長性が失われていくこともまた確かでしょう。
成長率が低くなると格差は拡大します。
アメリカがこれまで格差に寛容であったのは、格差は固定しないと信じられていたからですが、今後はその信仰も裏切られることになりそうです。
もしも、格差が努力や才能の結果ではなく、ただの不公平だと国民の多くが思い始めてしまったら、一体どこまで既存の秩序を維持できるのか。
これに関しては、この国も未体験ゾーンです。
この国の復元力がどこまでのものなのか、軽々しく予想できるものでもなく、ただ良くWATCHするしかないのだろうと思っています。

Posted by: akazukin | September 05, 2010 08:58 PM

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