格差に鈍感なアメリカ
最近のFTは、「Charting the squeezed middle(搾り取られる中流層を図解する)」といったシリーズを始めるなど、格差構造の報道に積極的です。
左図は、「Top dogs take bigger slice of spoils(勝者はより多くの戦利品を獲得する)」という記事に載ったグラフ。
アメリカのトップ10%の所得占有率が、80年代後半以降、30%から45%に急上昇。
勝者総取りの構図が強まっていることを示しています。
わかりやすくするため、総収入が5億円である100人の村があったとします。
均等分配されるなら、一人当たりの収入は500万円。
総中流時代の日本の姿です。
今のアメリカでは、たった一人が1億円プレーヤーとなり、全体の2割を持って行ってしまいます。
トップ10の残り9人は、平均で1400万円と余裕ある層。
その他90人は一人当たり300万円。
日本や韓国の非正規社員と同じレベルです。
こうした格差の拡大が世界中で発生しているのは、グローバルな資本の動きによって世界が一つになり、アメリカの過剰流動性社会が輸出(or模倣)されているのが一因と見ることも出来そうです。
さらに独裁者による収奪という要因も加わり、ついに貧困に耐え切れなくなったアフリカや中東では市民革命的な動きが活発です。
日本人がアメリカ社会の格差の根幹に迫った「超・格差社会アメリカの真実 (文春文庫)」には、以下のようなやり取りが記載されています。
近世経済史の教授をしているユダヤ系アメリカ人は私のデータを見て、「これほど格差が大きいとは知らなかった」と驚いた後、質問は私の動機に集中した。
「格差を示すデータを集めて公表すると、どんな見返りが得られるのか」
「貧しい人が格差云々言うのは分かるが、あなたが言う動機は何?」(引用終わり)
アメリカ人が格差社会に鈍感なのは、そのお国柄として、格差が国家秩序そのものを破壊することはないという共通理解が根底にあるのだと思われます。
米国では、富は恨むものではなく、全員の目標であり、格差を怨嗟することは負け犬宣言と同じです。
しかしながら多くの国民が、一生到達できない目標だと知れば、騙されたと思い始めるかもしれません。
中国における格差は、アメリカのように市場が富の配分を決めるのではなく、共産党の論理が決めている分だけ人為的であり、より直接的な政権批判へと発展する性格を持っています。
だからこそ中国共産党はアメリカと違って格差に敏感であり、最優先課題として懸命に対応しています。
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