やっぱりおかしい負債評価益
あれ~、野村って赤字じゃ無かったの、と思った人も多いはず。
日経の記事を引用すると、
「野村ホールディングスが1日発表した2011年10~12月期決算(米国会計基準)は純利益が前年同期比33%増の178億円となり、2四半期ぶりに黒字に転換した。外食大手すかいらーくの株式売却益340億円を計上したほか、「負債評価益」と呼ぶ自社の信用力悪化に伴う会計上の利益も約162億円発生した。これらの一時的要因を除けば税引き前損益は7~9月期からの赤字基調を脱していない。」
「すかいらーく」についてはともかく、負債評価益162億円については、いくら米国基準で認められているといっても強い違和感があります。
負債評価益を認める立場からの主張は概ね下記のようなものです。
①資産を時価評価するのなら、負債も時価評価は当然。
②投資家側では評価損が発生しているので、その見合いで発行者側に評価益が生まれるのは自然。
③市場から時価で全額買い戻せば差額の利益は実現するのだから、会計的に受け入れるのは普通のこと。
つい騙されそうになりますが、当然でも自然でも普通でもありません。
例えば、100万円で発行した社債が市場で80万円でしか取引されていないということは、投資家は発行時よりも高い利回りを要求しているわけです。
会社のクレジットにネガティブな評価を与えているのに、会計上の純資産が増加するのは、「木を見て森を見ず」。
会計とは、会社の姿を正しく反映するためのものであるはずが、投資家をミスリードする結果になるとすれば、本末転倒です。
なお、実際に一部の負債を安く買い取った場合には、それに対応する負債評価益は実現しているので、その分は計上して構わないものと考えます。
但し、そのためには実際の資金が必要で、それを市場要求利回り以下で調達できると考えることに合理性はないので、やはり上記③説は、「絵に描いた餅」ということになりそうです。
<参考>金融機関の「負債評価益」認めず 国際会計基準審(IFRS第9号)
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