犯罪
書店で手に取った時の感想は、値段(1800円)の割りに薄い、でした。
「犯罪」(東京創元社)の著者はドイツの刑事弁護士。
ヒットラーユーゲントの指導者として著名な、バルドゥール・フォン・シーラッハを祖父に持つという出自も話題になりました。
文体は感情と装飾を廃し、簡潔そのもの。
登場人物の心情描写がないことが、逆に新鮮です。
「薄い」という印象は「凝縮」へと変わり、11編の数奇な人生が展開されます。
フィクションではあるものの、筆者自らが扱った事件がモティーフなのは明白で、法律家である「わたし」が人間と法の関係を客観的に見つめて記録した観察日記のような書籍です。
「所詮、法律など人間の複雑さに追いつけない粗末な道具。だからこそ人間のために大事に扱わなければならない。」
著者は、そんな事を言いたいのではと感じられます。
行間をしっかり読み取ることの出来る大人向けの良書です。
この記事が参考になりましたら BlogRankingに一票をお願いいたします。
Comments