原油価格の10年
先週金曜日には2ドルほど調整したものの、原油(WTI)先物価格(期近)は1バレル106.70ドル。
アメリカでのガソリン価格は、消費を控える危険水準と言われる4ドル/ガロンに近い3.7ドル(1$=80円換算でリッター78円)まで上昇。
日本車など高燃費車への買い替えを促す材料にもなっていますが、バーナンキ議長は先日インフレ警戒感を発し、QE3には触れなくなりました。
あらためて原油価格の長期チャートを眺めてみます。
長期的に右上がりなのは物価全体を反映して当然としても、リーマンショック前の145$と直後の40$への崩落は、コモディティの実物価格として考えると、いかにも不自然です。
40$でも取引が成立するのなら、直前の145$は一体何なのか。
原油の採掘原価は、中東では10$/バレル以下。
高コストの海底油田では、売値で40~80$(ずいぶん幅がありますが)程度が損益分岐点と言われているようです。
NYMEXでWTI先物市場が出来たのは1983年です。
イラン革命騒動による1979年の第二次オイルショックに懲りたアメリカは、政治情勢で揺れ過ぎる原油価格を金融市場に取り込んでコントロールしようとしました。
その目論見は成功し、中東産油国の価格決定権は弱まりましたが、その代わりに世界の金融情勢の影響を強く受けるようになり、現物の需給状況とはかけ離れた「バブル」も起こるようになりました。
農業製品の高騰が、国連の食料支援を困難にするといった現象も起きました。
最近になって原油が再び100$を越えた理由としては、
・金融緩和による商品市場への資金流入
・イラン情勢の不安定化による思惑やリスクヘッジ
・景気回復期待による需要増加の観測
などが挙げられています。
実物商品である石油や農業製品を金融市場で取引する場合、株や為替と同じ自由度で良いのかどうか、今一度適度な規制を考える必要があるように思われます。
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