楽園のカンヴァス
「楽園のカンヴァス」
は、5月に第25回山本周五郎賞を受賞し、直木賞の候補作品にもなっています。
著者の原田マハ氏は、これまで恋愛小説作家というイメージでしたが、元々はMoMA(ニューヨーク近代美術館)勤務経験もあるキュレーター。
本職ともいえる美術の世界を舞台に、絵画への情熱とミステリー、そしてお得意の切ない恋心を描いているのですから、面白いのも当然です。
大原美術館の監視員として勤める未婚の母、早川織絵。
かつてはソルボンヌ大学でアンリ・ルソーの研究者として著名だった彼女に、突然MoMAのキュレーターであるティム・ブラウンの指示で新聞社からNY行きの誘いがかかります。
実は織絵とブラウンは17年前、スイス・バーゼルでルソーの贋作鑑定のため火花を散らした間柄。
物語は1983年のバーゼル、大富豪バイラー宅へと飛びます。
序盤から読者の興味を引きつけるストーリー展開。
ロマンチシズムもあり、美術への道標としては最高。
但し、ミステリーとしては気になる点が1ヶ所。
人物の動機が書ききれていない部分もあり。
お薦めには値するものの、もうちょっと書き込めていれば五つ星だったという惜しさを感じます。
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