欧州はなぜ行き詰ったのか(2)
20世紀の二度の世界大戦は、新興勢力ドイツが旧帝国主義勢力「英仏露」へ挑戦した構図でもありましたが、近代兵器戦という究極の自由競争は国土の多大な損壊をもたらし、覇権は新大陸に移りました。
アメリカの台頭により、欧州チャンピオンが世界覇権を握る公式が消滅した結果、激しい自由競争は割に合わなくなり、福祉を重視した社会民主主義的な思想が広まります。
フランスでは第二次大戦後すぐに、ルノーをはじめ、国鉄、保険会社、電力会社などが国有化。
イギリスでは「ゆりかごから墓場まで」と呼ばれる手厚い社会保障制度政策が採用されました。
一方、覇権を取り戻したいという欧州のプライドも消えてはいません。
共通通貨ユーロという構想は、ハト派には欧州協調、タカ派には対米挑戦という両面解釈が可能であり、多様な価値観が渦巻く欧州においてコンセンサスを獲得。
ユーロは域内の貿易を活発にし、アメリカがテロとの戦争で疲弊するという敵失もあって、ピーク時には米ドルの1.6倍という高い価値を持ちます。
2007年、ブラジルのスーパーモデル「ジゼル・ブンチェン」が、新規の契約をユーロ建てで要求したというニュースは象徴的でした。
しかしながら過大評価されたユーロは域内にバブル的な過剰流動性をもたらし、調子に乗りやすい南欧国家は身の程知らずの借金を重ね、今では身動きが取れません。
共通通貨の夢は一旦挫折しました。
この記事が参考になりましたら BlogRankingに一票をお願いいたします。
Comments