デフレの真犯人
「デフレの真犯人 ―脱ROE〔株主資本利益率〕革命で甦る日本」
の著者は、TV東京のニュースにも登場するJPモルガン証券の北野一氏。
本書の構成はシンプルで、まずは日米のインフレ率の差は2%で固定しているという事実に注目します。
アメリカのCPIが+3%であれば日本は+1%で、アメリカが0%だと2%のデフレになるということです。
ではなぜ、この2%が生まれるのか。
筆者は、ROEを気にし過ぎる日本の経営者が資本コストを高止まりさせ、結果として自ら「金融引き締め」を招いていると分析します。
・株主の要求に応えるために他のコストを切り詰める。
・低ROEの事業を、採算性が低いとしてチャレンジしない。
等により、売上増のチャンスを逸し、経済規模を縮小させ、日本全体がデフレから脱却できないのだ、と言います。
私の知る限り、日本の経営者が個別の投資案件に関して「ROE」を特に重視しているとは思いません。
元々のROEが高くないので、既存プロジェクトとの比較において新規事業の採算性ハードルがそれほど厳しくはないという背景もあります。
むしろ社内での壁は、そんなものに大きな市場はない、とアイデアを潰してしまう先入観かもしれません。
いずれにせよ、リーマンショック以降(バブル崩壊以降?)、社会全体が加点主義から減点主義になり、キャッシュリッチを好んで投資に慎重な傾向は否定できません。
筆者が言いたいことは、多少収益性の低い事業でも積極的に取り組み、長期的な成長を目指して元気を出そうということで、色々考えて捻り出した「日本企業への応援歌」というのが本音のところでしょうか。
実際のデフレの犯人は「単独犯」ではなく、もう少し複雑だと思いますが、とにかく萎縮せずに投資していこうという趣旨には大いに賛同します。
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