ソニー株が転換価格を越えた
円安に助けられ、11月に売り込まれた「ソニー」も12月は大きく上昇。
大納会では、高値975円、終値958円と、11月に発行されたユーロ円建て新株予約権付社債(5年)の転換価格「957円」を越えました。
この社債は利息ゼロ、その代わりに新株予約権が付与されています。
ソニーの発行IRには、下記の表現があります。
『(9)新株予約権と引換えに金銭の払込みを要しないこととする理由
本新株予約権は、転換社債型新株予約権付社債に付されたものであり、本社債からの分離譲渡はできず、本新株予約権の行使は本社債の現物出資によりなされ、かつ本社債が繰上償還されると本新株予約権の行使期間が終了しこれに伴い本新株予約権は消滅する等、本社債と本新株予約権が相互に密接に関連することを考慮し、また、上記(4)(ロ)記載のとおり決定される当初の転換価額を前提とした本新株予約権に内在する理論的な経済的価値と、本社債に本新株予約権を付した結果、本新株予約権付社債全体の発行に際し、本社債の利率、払込金額等のその他の発行条件により当社が得ることのできる経済的価値とを勘案して、本新株予約権と引換えに金銭の払込みを要しないこととした。』
要は、利息の代わりに予約権を付した「分離できない」一体型商品なので予約権だけのプライシングはしません、ということですが、発行後にあっさり分離されました。
共同幹事のゴールドマンサックス(GS)証券が、他の引き受け分まで買い取り、これを社債部分と新株予約権に分離して販売したからです。
(ソニーCB、再加工し販売 ゴールドマン:日経記事)
その量は、本社債全体の75%。
全て転換されると、発行済み株数の10%以上にもあたります。
GSの目的は、大株主なることではなく、このリパッケージ取引による利益と、新株予約権を利用した今後のディーリング機会を提供することにあると見られています。
ソニー株が高いところでショートし、下がれば普通に買って決済、上がれば新株予約権行使で決済。
低リスク(「踏み上げ」を気にしない)で空売りできます。
意外にも早く(?)株価が上昇してきたことで、新株予約権の価値は高まりそうです。
ソニーの直近1ヶ月の上昇率は20%と、日経平均の10%を上回っていますが、これは本社債の発行によって11月に10%以上も下落したからであって、3ヶ月のパフォーマンスはグラフの通りです。
どうせエクイティファイナンスで既存株主に負担を強いるのであれば、通常の公募増資の方がシンプルな分だけ、透明性に勝ったかもしれません。
Comments
あけましておめでとうございます。
本年もブログを拝見するのを楽しみにしています。
ソニーのCBのリパッケージの記事を目にしたときはGSのうま味は何なのかぱっと分からなかったですが、これを読んでイメージが沸きました。ありがとうございました。
Posted by: ASK | January 03, 2013 11:42 AM
ソニーもエクイティファイナンスの方法を色々と検討したはずで、なぜこういうCBがソニーに取って良いと判断したのか、単にGSに上手くやられちゃったということなのか。いずれにせよ、ソニーもちょっと変わったことするな、という印象がありました。
真相はよくわかりませんが、何かのお役に立てれば幸いです。
Posted by: akazukin | January 03, 2013 12:03 PM