キプロスの生きる道(1)
19世紀、エジプトに進出していたイギリスは、露土(ロシアVSオスマントルコ)戦争後の1878年、ロシアが攻めてきたらオスマン帝国を支援するからキプロスを頂戴、と言って租借。
第一次世界大戦でオスマン帝国が敵になると、さっさと併合してしまいます。
第二次世界大戦後は、ギリシャ派とトルコ派が反イギリスで共同し、1960年にイギリスから独立。
しかしその後1974年、ギリシャ派によるクーデターが起こるとトルコ軍が軍事介入して南北に分断されました。
現在、北側3分の1がトルコ系、南側がギリシャ系ですが、北側はトルコ以外からは承認されていませんので、今世界がキプロスと言えば南キプロスのことになります。
昨年末のキプロスの銀行預金残高は648億ユーロ(8兆円弱)ですが、その内4割が海外からの預金。
ロシアマネーは260億ドルと推定されているので、海外分の8割方はロシア絡みです。
キプロスは”魅力”を出すために、元来タックスヘイブンでしたが、他のEU加盟国との差を埋めるため、2008年、4%台の法人税を10%に引き上げました。
ただし、それでも激安。
ロシアンマネーの集結地と言えば、まずはロンドンが思い浮かびますが、イギリスの法人税率は段階的に22%まで下げられているところです。
また、キプロスとロシアとの租税条約は、ロシアに有利に出来ています。
例えば、キプロスの会社は、ロシア投資から得た利息やロイヤルティ収入に源泉税が課されません。
そもそもキプロスにキャピタルゲイン課税はありませんから、ロシア人はキプロスに会社を作って株売買や融資をし、課税されない利益をバカンスで使ったり、またどこかへ持って行けば良いのです。
キプロスに金を持ち込めばサイコーだぜ、ということで、オリガルヒ全盛の90年代には、現金入りバッグを持って東欧からやって来る怪しげな預金者たちの姿が見られたようです。
ちなみに日本の場合は、いわゆるタックスヘイブン税制があり、キプロスの会社に利益を貯め込んでも日本で課税される恐れがあります。
暖かい場所には目がないロシア。
おまけに投資環境抜群と言うことで、ダーティマネーも大量に流入。
一方でEU、特にドイツは、曲がったことが大嫌い。
ましてやマネロンのために税金を投下することは絶対に許さないので、170億ユーロ要請された支援額を100億ユーロに値切り、58億ユーロを預金者に負担させることとしました。
キプロス議会は、当初の「10万ユーロ以上9.9%、以下は6.75%」案のみならず、「2万ユーロ以下非課税」案、「10万ユーロ以下非課税、越えた金額に15.8%」案なども協議したようですが、結局は預金課税法案を否決しました。
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