« 円安だけでない日本株上昇 | Main | 豪ドルが急反発 »

March 10, 2013

「いつかはゆかし」について

Yukasi「やまもといちろう」さんという方が「いつかはゆかし」を運営するアブラハム・プライベートバンク社に公開質問状を出したという件が一部で話題になっているので、ゆかしのHPを覗いてみました。

自動年金積み立てサービスと称する「いつかはゆかし」は、年率10%を目標に、資産運用を目指す個人に海外ファンドを紹介し、手数料(販売手数料ではなく助言手数料)を取るビジネスです。

30歳から毎月5万円を投資し、年利10%で複利運用すると30年で1億円になるという計算に嘘はありません。
というか、これは単純な年金終価係数の問題です。

ただし、年利10%で30年間も複利運用することは、大変困難です。
ちなみに年利7%でも10年で資産は2倍になりますが、私の周囲で、10年で資産を2倍にした人はほとんど見当たりません。

アブラハム社は、外国風の名前ですが、日本の金商業法に基づく投資助言会社。
法的カテゴリーとしては、マンションの1室から有料メルマガを発行して経営しているような会社と同じことになります。

親会社のアブラハム・グループ・ホールディング社は海外投資新聞をネットで発行し、竹中平蔵氏らとの対談を載せるなど、著名人を使って信用力をアップさせる努力をしています。

投資助言料は積立残高の0.945%/年となっており、1億円になった時には年間約100万円を支払う必要があります。

ちなみにJ-REITの資産運用会社の場合、運用手数料は資産残高の10000分の50(0.5%)程度で設計しているところが多いと認識しています。つまり、1000億円運用して年間5億円(プラスアルファ)くらいの感じです。
「ゆかし」の手数料率は、この約2倍です。

HP上で見たQAの一例です。

Q:海外のファンド会社が倒産したら、私の資産はどうなりますか?
A:ご安心ください。多くのファンドは、投資家の資産を分別管理しており、運用会社が倒産してもお客様の資産に影響はありません。なお、日本の銀行が倒産した場合には上限1000万円までしか保証されませんが、マン島に籍を置く金融機関(海外積立プログラム提供会社)では、投資家の時価の90%がマン島政府によって保証されます。マン島政府は日本政府より格付けが高く安全です(2012年10月)。

いきなりマン島が出てくるのが奇妙ですが、これは「ゆかし」が勧めるロンドン上場のハンサード(Hansard Global Plc)社がマン島に籍を置いているからです。

複数のネット上での情報を基にすると、加入者はまずハンサード社を紹介され、ハンサード社は複数の運用資産を組み合わせたラップ口座商品を加入者に販売しているようです。

本来は顧客のニーズに合わせて様々な商品を紹介するのが誠実な投資助言業の姿でしょうが、紹介先が事実上固定化しているような実態がQAからも感じ取れます。

なお、自動年金積み立てサービスと語っていますが、特別に年金として安定支給される仕組みが構築されている訳でもなく、加入者は直接海外ファンドと契約するための助言サービスを受けるだけですから注意が必要です。

30年もこの会社を信じて良いという根拠が、私には見当たりません。
仮にアブラハム社が破綻すると、加入者とハンサード社等とのコミュニケーションに大きな障害が発生する可能性もありそうです。

|

« 円安だけでない日本株上昇 | Main | 豪ドルが急反発 »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




« 円安だけでない日本株上昇 | Main | 豪ドルが急反発 »