なぜ原油だけは上がるのか
最近の原油高の背景には、中東諸国の政情不安定があると言われています。
まずはシリア。
シリア自体の原油輸出額は年間50億ドル程度と微々たるものですが、内戦が長期化かつ深刻化し、周辺の中東地域に与える悪影響が懸念されています。
そしてエジプト。
こちらも輸出量は110億ドルで世界42位レベル。
サウジの30分の1程度ですから、直接の影響はマイナーです。
エジプト情勢というと、まず気になるのはスエズ運河が閉鎖されるリスクですが、運河を管理するエジプト軍が「金のなる木」を枯らす可能性は限りなくゼロ。
万が一、テロ行為があったとしても喜望峰ルートがあるので、運賃は嵩みますが、影響はフェイタルではありません。
エジプト情勢が拡散する可能性として思い浮かべるのは、パレスチナのガザ地区を実効支配するハマス。
ハマスは、元々はムスリム同胞団のガザ支部でした。
2012年11月のイスラエル軍によるガザ攻撃の際、エジプトのカンディール首相がガザ地区を訪問し、今は失脚したムルシー前大統領が停戦交渉の仲介を行ったのは、記憶に新しいところです。
エジプトにおける権力構造は非常に流動的ですが、そもそも親米であるエジプト軍とモスリム同胞団が、簡単に上手く行く訳はありません。
[エジプト=アメリカ=イスラエル]VS[ムスリム同胞団=ハマス]。
ここにイスラエルの天敵(?)イランが加われば、次なる連想はホルムズ海峡封鎖。
といった連想ゲーム的な危機シナリオはあるものの、イランでは穏健派のロウハニ師が大統領になったばかりで、ここまで煽るのは非現実的。
WTIはこの1ヶ月で95$から105$と10$ほど上昇しています。
ホルムズ海峡が封鎖されると原油価格は200$~300$とも言われているので、相場は危機シナリオを5%くらいは織り込んだというところでしょうか。
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