大型増資が続く東京市場
今月に入ってからの3件の増資案件をざっと振り返ります。
まずは7/3発表の「電通」。
発行済み株数278,184千株に対し、新規公募11,000千株(OA分3,000千株含む)、売出し29,000千株。
予定調達資金は1200億円余りと大きいのですが、売出し株比率が高いため、希薄化率は約4%と低くなっています。
株価は7/3の終値3475円に対し、翌日が9%安の3155円。
これは希薄化率からすると少し過剰反応だったようで、今日17日は3265円まで戻っています。
電通は3月末に約4090億円を投じて英広告大手イージスを完全子会社化しましたが、買収費用のうち2000億円を短期借入金でまかなっており、今回の調達資金で一部を返済する予定とのことです。
なお、電通のB/S合計2兆2000億円の内、イージス関連の「のれん代」だけで5200億円(元々イージスが持っていた「のれん代」を含む)と巨額になっており、全額償却すると自己資本5800億円の殆どが消えるというスーパー冒険的なM&A。
小心者の私が経営陣にいたら、とても踏み切れなかったと断言できます。
7/5に発表されたのは「大和ハウス工業」。
今やハウスメーカーと言うよりは、大手デベの一角と考えた方が良いくらい不動産開発に傾斜しており、先月にはコスモスイニシア(旧リクルートコスモス)を子会社化しました。
公募新株60,500千株、売出し20,000千株と、発行済み599,921千株に対して10%の希薄化。
株価は7/5の1965円に対して翌日は9.4%安の1780円と、ほぼ希薄化率どおり。
17日現在では1849円と、不動産関連に追い風の地合いでもあり、翌日値からは4%ほど戻しています。
7/8には「オリンパス」。
3700万株の公募増資に加え、400万株の自己株式の売り出し。(全て海外市場)
発行済み305,671千株に対しては、12%の希薄化。
株価は8日の3095円に対して、翌日は2928円と5.4%安。
希薄化率に比べれば下げ渋りましたが、その後も軟調な展開となり、今日は2926円と翌日値を下回りました。
例の事件で大きく毀損した自己資本の充実を図ろうとするのは理解できなくもありませんが、元社長らの有罪判決と会社に対する10億円の罰金処分(証取法、金商法違反)が出た7/3から1週間も経っておらず、市場の一部では驚きが走ったようです。
また、海外投資家からは、総額170億円の損害賠償請求訴訟も受けています。
希薄化を考慮した現在の予想PERは34倍程度。
内視鏡実質オンリーワン企業ゆえの割高容認ということでしょうが、思い返せば、ガバナンス能力も割高評価でした。
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