« 日米長期金利差が再び拡大 | Main | ベライゾンが過去最大規模の社債を発行 »

September 11, 2013

ドル円相場と購買力平価(長期)

Ppp国際通貨研究所が作成した、ドル円と購買力平価のグラフです。

購買力平価(PPP)は3種類提示されており、消費者物価(赤)>企業物価(緑)>輸出物価(青)の関係が続いています。
結局のところドル円は、このレンジの中で動いています。

歴史を振り返ると、1973年の変動為替相場制移行後しばらく、ドル円相場は上下動が激しく荒っぽい展開でした。

70年代後半からPPPでは既に円高トレンドでしたが、当時は有事のドル買い法則があり、オイルショック(中東紛争)やイラン革命では大きくドル高に振れました。

転換は、1985年のプラザ合意。

1$=230円が1年後には150円になるという劇的な円高方向への調整が行われた結果、ドル円相場は安定化。
以降は、輸出物価によるPPPと、ほぼ連動するレートで推移しています。

歴史的なプラザ合意からの15年間は、貿易が為替を決める時代だったと言えそうです。

Photo_21985~2000年まで、日本の貿易黒字はほぼコンスタントに10兆円を超え、黒字国は通貨高になるという教科書通りの結果が生じています。

しかし2000年頃から、実勢相場が輸出物価PPPよりも若干円安気味に推移するようになっています。

原因として考えられるのは金融商品取引の発達。
96年に始まった金融ビッグバンは、折からのWIN95によるインターネットの爆発的な普及とも相まって、ネット証券による株と為替取引の増加をもたらし、為替相場への影響が徐々に大きくなっていきます。

特に2000年代半ば頃は、日本のゼロ金利の長期化とFX取引の大衆化に伴って、いわゆる円キャリー取引が急増。
実勢相場は久々に企業物価PPP(緑)を超えるまで円安になり、FX長者の誕生も話題にもなりました。(脱税も話題になりました)

しかしながらリーマンショックが起こると、それまでの過剰なレバレッジが逆回転し、ドル円相場は円高へ転換。

日米株安にギリシャショック、南欧の財政危機などリスクオフイベントが続き、さらには東日本大震災にも見舞われるなど、文字通り「泣きっ面に蜂」。

円は実家に「引きこもる」ようになり、2011~2012年夏までは80円割れが常態化しました。

際限のない円高が続くかと思われた2012年の終盤、欧州信用不安の縮小と日本の政権交代が重なると相場は反転。
それまでの円高期待ポジションが巻き戻されると同時に、投機マネーも参加して強烈な円安株高トレンドが発生。

原発停止で燃料輸入が増えた結果、貿易赤字も構造的となり、ドル円水準は輸出物価PPPを離れ、企業物価PPP水準まで円安に振れました。

今後、原発再稼働により貿易収支の改善が見られると、再び円高圧力が顕在化する事態も考えられますが、現状ではそこまでの大胆な政治判断は期待できない状況です。

次期FRB議長は流動的ですが、仮に輸出主導(ドル安)から内需主導(ドル高)へと姿勢が変わるなら、ドル円はCPIのPPP水準に牽引されて、120円台をターゲットとするような展開も考えられます。

但し、日本がアメリカ並みのインフレにならなければ、常に80円割れの円高圧力が残ることになります。

|

« 日米長期金利差が再び拡大 | Main | ベライゾンが過去最大規模の社債を発行 »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




« 日米長期金利差が再び拡大 | Main | ベライゾンが過去最大規模の社債を発行 »