サマーズの長期停滞論
FRB議長就任を巡る泥レースに嫌気がさし、9月に辞退したサマーズ。
11月に行われたIMFでの講演は、彼の本音を探る意味でも話題となっています。
原文はこちら。
この講演内容は各紙が取り上げて論説していますが、例えば12/3付けロイターの「サマーズ氏の長期停滞論でよみがえる資本移動の逆説」。
サマーズは自然(均衡)利子率がマイナスになったとの仮説を展開していますが、つまりは潜在成長率がマイナスということで、原因は需要不足。
需要不足が起こるのは、世界が貯蓄過剰に陥ってしまい、成長するフロンティアに資本が向かわないからだ、という論調になっています。
資本臆病説、といったところでしょうか。
資本余剰は先進国に偏っており、さらにはシニア層に集中しています。
先の短いシニア層にとって重要なのは、高い成長よりも安定した配当。
本来消費性向が高く、成長を担うはずの若年層は、車を持たず、郊外の広い住宅を敬遠し、都会で住宅をシェア。
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米国景気が回復して株価が上がれば、余裕が出来た投資マネーは新興国へ向かうかと思いきや、強くなるドルを目当てに資金が引き揚げられ、新興国通貨にはショックが発生。
これで米国の政策金利が上昇すれば、資金は更に内側に籠もるかもしれません。
そもそも社会保障が充実していれば、人間はそれほど貯め込まなくても良いはずですが、社会保障費で潰れそうな国家財政が信用できないから自助努力で貯蓄過剰となり、それが需要不足を生んで成長率が低いから税収が伸びず、国家財政が改善しないので将来不安を助長して貯蓄に励む、といった心理的な悪循環があるのかもしれません。
人間は合理的な行動よりも、最悪を避けようとする心理を優先しがちであることは、身の回りで頻繁に見られます。
もし長期停滞論が正しいなら、長期金利はかつてほど上昇しないことになり、今現在利回りが高い資産は長期に渡って「お宝」になる、という可能性も踏まえておきたいと思います。
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