取り残される年収300万円層
企業が無償で国家に奉仕する源泉徴収と年末調整。
それが徹底する日本。
国税庁が毎年公表する「民間給与の実態調査結果」は、信頼性が高いと思われます。
その中から、1年以上勤務する男性勤務者(含む非正規)を給与階層別にグラフにしてみます。(女性と短期勤務者を含めるとパートの方が多く入ってきて数字が歪む)
比較時期は、まだバブル前の昭和57年と、最新の平成24年。
1982年と2012年の30年間の変化を見ることになります。
なお母数は、昭和57年が2240万人で、平成24年が2720万人と大きく増加。
500万人も増えているのは、サラリーマン化や「法人成り」が更に進行したことと、高齢になっても働く人が増えたからではないかと思われます。
一番下の青色が年収300万円以下の層ですが、実数で200万人減り、パーセンテージでは、39%から24%と大きく減少。
また、年収300~400万円層も減って、メジアン(中央値)は、年収300万円台から400万円台にアップ。
年収500万円以上の割合は、20%から40%に倍増。
1000万円以上の数も100万人以上増加して、率でも2%→6%と3倍増。
単純平均給与で見ると、昭和57年が320万円で、平成24年は408万円と、28%の伸び。
この間CPI(消費者物価指数)は、83.16→99.69と20%アップなので、実質購買力も伸びています。
全体としては穏やかな高収入化が進んでおり、文句が付けようのない実態に見えますが、年収300万円以下を更に細かく100万円刻みにしてみます。
100万円以下が増えた分、100~200万円、200~300万円いずれも減っており、内容は悪化しています。
300万円以下の層にのみ、全体とは逆行した低収入化の傾向が現れているのは、やはり非正規社員が増加した影響でしょう。
正社員(男)の中では、年収300万円以下は15%に過ぎませんが、非正規社員(男)に限ると78%にもなっています。
実際、正社員と非正規社員が混合して働いている職場が多いと思いますが、ここまでの給与差が正当化されるほど仕事の中身が違うとは思えません。
政府は滑稽なほどベースアップに御執心ですが、多くの大企業正社員の場合、業績の向上が一定程度分配される制度が整っています。
むしろ政治の役割は、ユニオンが整備されていない非正規社員を救い上げることのはずで、その近道は、「非正規社員の正社員化」よりも、「同一労働同一賃金の実現」に向けての努力ではないでしょうか。
私の実体験では、同じ企業グループの中で、頑張る契約社員とチンタラ正社員との待遇差が特に不公平で、自分の給与が少し減らされても構わないから、何とか是正したいと感じたものです。
Comments