書評「リーマンショック5年目の真実」
「リーマン・ショック 5年目の真実」
は、日経新聞に連載された記事の纏め本です。
特に目新しい事実がないのは期待通り(?)ですが、この手の書籍は、振り返って時系列を調べる時などに便利なので、必読と言うよりは「必置」だと思って買うようにしています。
リーマンショックから欧州ソブリン危機という流れを連続的に捉えると、金融システムの崩壊を食い止めるために巨大な民間リスクを引き受けた国家(中央銀行)は次の危機に耐えられるのか、という点が大きな懸念として浮かんできます。
FRBのバランスシートは、危機前の8700億ドルから4.2兆ドルへと5倍に拡大し、GDPの25%。
日銀のバランスシートは、240兆円を越え、GDPの約2分1。
国債利回りは「(リスク)フリーレート」と呼ぶと習ったものですが、金融危機以降、この言葉を使う人は激減しました。
日本のバブル処理においては、破綻した金融機関に公的資金を投入するのに大変な苦労をしたものですが、今では中央銀行がリスク資産を購入することを「量的緩和」などという言葉で誤魔化し、更には平気で追加の催促までしています。
後世の歴史家は、これが究極のモラルハザードの始まりだったと評価するかもしれません。
「人間の強欲と集団心理」というバブルの原因をコントロールすることに未だ成功していない以上、次の危機は必ず来るのでしょうが、その時に前回のジタバタを知らないよりは知っている方がまだマシという意味で、本書は存在価値がありそうです。
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