書評「オールイン」
「オール・イン ~実録・奨励会三段リーグ」の著者、天野氏の人生は壮絶です。
あの羽生善治を生んだ八王子将棋クラブで天才将棋少年と呼ばれて奨励会入りし、16歳で三段昇段と順風満帆。
いつ名人になれるかと自分で皮算用し始めてから、よもやの停滞。
才能溢れるものにありがちなマルチな生活を志向し、中学生から飲酒と喫煙を開始。
競馬、麻雀にも精を出し、気が付けば26歳の年齢制限で奨励会を退会。
高校にも行かずに打ち込んだ彼に残ったのは、将棋普及の道。
良き理解者の元で会社員として将棋に関わり続ける生活が見えた途端、28歳の若さで、突然の舌ガン宣告。
声は失ったものの、治療によって、どうにか体力を回復し、アマチュアとして将棋の県代表にもなるなど復活。
挫折と大病を経て、初めて人間らしい落ち着いた生活を獲得したようにも思える筆者の、反省と再生のストーリーです。
将棋界を知る人も知らない人も、一気に読めます。
それにしても、十代から飲酒・喫煙・ギャンブルと不摂生をしていると、10年ちょっとで見事に癌になるという事実が示すのは、生活習慣と癌との恐ろしいほどの因果関係です。
本書の中で、これが最も戦慄を覚えました。































































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