超高速取引は必要ない
超高速(高頻度)取引会社を巡る評価は、この1ヶ月で急転直下、暗転しました。
事の発端は3月10日。
大手HFT(High-Frequency Trading)業者のバーチュ・ファイナンシャル社がIPOを申請。
その目論見書の中に、2009年1月1日から 2013年12月31日までの 1238 営業日で損失を出したのがたった 1 日という記載があったことが波紋を呼び、インサイダー疑惑に火が点きました。
さらに3月31日。
正に絶好のタイミングで、「マネーボール」「世紀の空売り」等の著書があるマイケル・ルイスが新作「フラッシュ・ボーイズ( Flash Boys: A Wall Street Revolt)」を出版。
そこに登場するのは、日系カナダ人のブラッド・カツヤマ氏。
Royal Bank of Canada(カナダロイヤル銀行)に勤務していたカツヤマ氏は、HFTによる取引に疑問を抱いて対策を考えついたものの、大手銀行家たちは聞く耳を持ちません。
業を煮やした彼は会社を辞め、公正な株取引ができるプラットホーム運営会社「IEX」を設立。
今では、ゴールドマンサックスもIEXを推奨。
日本のマネックス証券も先週、米国株取引の際にIEXを取引執行先として追加するとリリースしています。
HFTの「手口」は、大きく分けて二つあると言われています。
一つは、撒き餌戦略の「メーカーストラテジー」で、いわゆる裁定取引。
細かなマーケットメイク注文による鞘稼ぎや、複数銘柄間でのアービトラージ。
より怪しげなのは、投げ網戦略の「テイカーストラテジー」。
この中には、大量の見せ玉による相場操縦型の取引が含まれていると噂されています。
ちなみに東証では、注文システム「アローヘッド」のすぐ近くのコロケーションエリアに、ヘッジファンドやHFTのサーバーを置かせる特別待遇を提供しています。
疑惑の高まりを受け、ニューヨーク州のエリック・シュナイダーマン司法長官は、金融市場の取引で不正に優位なポジションを得ている疑いで6社のHFT業者に召喚状を送った、と今日のWSJは伝えています。
著名投資家のW.バフェット氏は、「超高速取引は資本主義に何の貢献もしていない」と語り、傘下のビジネスワイヤ社が、HFT向けにニュースを配信することを禁じました。
2010年5月にNYダウが10分で1000$下落した「フラッシュ・クラッシュ」犯人説の真偽を含め、HFTの真実が司法の場でキッチリ明らかにされることを期待します。
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