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May 14, 2014

21世紀の資本主義

1403geier_bk_article今アメリカで教養があることを示すには、ピケティの「Capital in the Twenty-First Century」を読んでおくことが必須になっているというくらい話題のようで、WSJ日本版も「日本でも格差は広がる―欧米で話題『21世紀の資本論』」という記事で本書を取り上げています。

本国フランスで昨年夏に出版され、今年4月には英語版と半年ほどのタイムラグ。
しかしながら邦訳は2017年3月の予定とのことで、あまりに遅すぎて唖然とします。

内容はシンプルで、「資本のリターンが生産や所得の成長率を超える場合、資本主義下では格差が拡大しやすい。それは19世紀にも見られた現象だが、21世紀にも再現しようとしている。格差の広がりは、能力や努力に報いる社会を蝕み、民主主義の基盤を揺るがしかねない」。

19世紀と21世紀というところがポイントで、20世紀は世界規模の戦争によって一旦「解決」しているのです。

日本で銀座に1坪か2坪土地を持っていれば1億円で、利回り5%なら500万円。
軽く平均年収を超えるのは不公平と感じるのは簡単で、わざわざ本書を読むまでもありません。

wikipediaによれば、不公平を是正するには、年率2%の資産課税と最高税率80%の所得税が必要だというのがピケティの提案です。

アメリカの格差について日本人が書いたものとしては、「超・格差社会アメリカの真実 (文春文庫)」を強くお勧めしますが、著者のあとがきの中に、ユダヤ系アメリカ人の教授に、なぜ格差に興味を持つのか不思議がられたという一節があります。

「リーマンショック」「We are the 99%運動」等を経て時代はすっかり変わり、今や誰しも格差問題に真剣に興味を持つようになりました。

強欲資本主義を修正しなければ、現状への懐疑が強くなり、過激な宗教的原理主義、排他的な民族主義などが勢力を増して社会が大きく混乱するという危機感が、欧米の知的エリート層の間に共通に広がっているのだろうと思われます。

マルクスは、資本主義が発展して共産主義になると考えたわけですが、実際の資本主義社会は、平和による格差拡大と戦争や混乱による格差解消を繰り返すことで生き残ってきたのかもしれません。

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