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May 13, 2014

書評「タックスヘイブン」

「タックスヘイヴン Tax Haven」は、橘玲氏の長編経済小説として、「マネーロンダリング」「永遠の旅行者」に次ぐ第三弾という位置づけになります。

橘氏の活動のメインは、独特のニヒルなスタンスからの海外投資ノウハウ本や経済エッセイというノンフィクションの部分にあり、経済小説は本業のスピンアウト的なプロダクトとして軽く楽しめれば十分、という理解を私はしています。

これまでの三作をざっと眺めると、オフショアの金融テクニックを駆使して華麗にマネーを動かす金融小説という趣から、マネーに翻弄されながらも精神的に再生しようとする人間の物語へと重心が移っているように思えます。

そもそも、秘密の金融ノウハウを駆使し、国家権力を出し抜いて華麗に蓄財するというヒールの造型が今や非現実的であることは、あのスイスのプライベートバンクでさえも個人情報を国家から守り抜くことが出来なくなったことが象徴しています。

昔から「最大の運用は税を払わないこと」ですが、国家権力は次々と見つかった穴を塞いで来るので、小説の方も、人間模様や一般的なミステリーの要素を多くすることで現実に対応している印象があります。

前作「永遠の旅行者」の舞台はアメリカでしたが、今回はシンガポール中心にアジアになっていることも、時代を反映しています。

前作が上下巻700ページ以上と長かったことを反省したのか、今回は400ページ程度に纏まっていますが、その分、登場人物(特に女性)の書き込みが少し不十分のように思われたのが残念なところ。

しかしながら、海外金融の実務知識をベースに、これだけのエンターテイメントを書ける人材が日本では貴重な現状を踏まえると、今後も大いに多彩な背景の作品に取り組んでもらいたいと思います。

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