エドワード・スノーデンは裏切り者か、愛国者か
2013年6月、香港でアメリカ国家安全保障局(NSA)による個人情報収集の手口を告発したエドワード・スノーデン。
先週NBC「Nightly news」のアンカー、ブライアン・ウイリアムスによるロングインタビューがテレビ放送され、再び大きな注目を浴びています。
このインタビューはモスクワで行われましたが、その際スノーデン側で立ち会ったのが、彼から情報提供を受けて告発に協力した弁護士のグレン・グリーンワルドとドキュメンタリー映像作家のローラ・ポイトラス。
そのグリーンワルドが書いた「暴露―スノーデンが私に託したファイル―」が、5/14に世界同時発売されました。
英紙ガーディアンに大スクープを載せるまでの舞台裏は、本人が書いているだけに生々しく、緊迫感に充ちています。
NBCのサイトで公開されているインタビューも見ましたが、高校中退とは思えない(?)知性を感じさせるスノーデンの落ち着いた語り口は、彼がCIAやNSAでスパイ活動に従事していたという主張を納得させるものがありました。
彼の動機は純粋に、国家の異常な監視体制に対する怒りと危機感であるように思われます。
一方、面子を潰されたワシントン。
ジョン・ケリー国務長官は、アメリカの諜報活動に支障を生じさせ、安全保障面で大きなダメージを母国に与えたと主張し、国に戻って法の裁きを受けるべきと、怒りを顕わにしています。
インターネット社会は、利便性と引き替えにプライバシーを侵害し、消せない過去は個人の人生を破壊するほどの暴力性を備え持っています。
裏切り者か、愛国者か。
NBCの朝のニュース番組「TODAY」では、真っ二つに分かれていたアメリカの世論が、放送が終わった後、61:39で、愛国者であるという評価に振れました。
しかしながら、彼の行動を支持するかという問いには、否定派が上回ります。
気持ちは分かるが方法はどうか、というのが多数意見であり、海外を逃げ回っていることも印象を悪くしています。
まだ30歳と若い彼は、いずれ母国に戻って法廷で戦うことを選ぶような気がしますし、そうすべきでしょう。
国家機密の情報漏洩は犯罪ですが、国の機関による盗聴行為が憲法違反だとするなら罰するべきなのかどうか。
国論が二分する中で、国民自身が国家のセキュリティとプライバシーの在り方を議論すること自体が、彼の提起したかった争点のはず。
なお、本書の原題である「No Place to Hide」は、逃げ回るスノーデンの運命のことではなく、我々一人一人が国家からの監視を逃れられない状態を示しています。
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