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June 28, 2014

各国製造業の生産コスト比較

061714krugman1tmagarticle左のグラフは、各国の製造業の時間当たり生産コスト(2012年)を比較したもので、出典はポール・クルーグマンのブログ「German Labor Costs」です。

ドイツが45.8ドルで、アメリカが35.7ドル。
日本はアメリカと、ほぼ同じ。

クルーグマンは、「アメリカはドイツより安く作っているのに、どうして輸出がドイツほど伸びないのか」という問題提起をしていますが、GMの大量リコールを持ち出すまでもなく、世界の消費者が多少のコスト差よりもドイツの品質を選択するのは当然だろうという気がします。

そのドイツよりも高い製造コストの国が6ヶ国あります。

コスト高トップはノルウェー。
ここには何と言っても北海油田があります。

石油代金を積み立てたソブリンファンド「ノルウェー年金基金」の運用資産規模は、アブダビやサウジをも上回る878ビリオン$(約88兆円)。
単純計算で国民一人当たり1700万円にもなり、これだけあれば余裕でしょう。

2位はスイス。
ここは金融が強く、食品のネスレ、医薬のノバルティス、更には時計などの精密機械があります。

今年5月、最低賃金を時給22スイスフラン(2500円)にする法案が国民投票にかけられました。(結果は否決)

3位はベルギー。
本拠を置く大企業としては、アンハイザー・ブッシュ(バドワイザー)くらいでしょうか。

統計を見ると最大輸出品は化学製品で、独バイエルグループのランクセス(ゴム、化学)や米ファイザーの製造拠点があります。

首都ブリュッセルにはEU本部があり、独仏の中継点である「地の利」に恵まれていること等が高コストを支えているのかもしれません。

4位はスウェーデン。
通信機器のエリクソン、軍用機のサーブ(車部門は売却して撤退)、家電のエレクトロラックス、アパレルのH&M、家具のイケアなど結構あります。

5位はデンマーク。
域内に北海油田の一部権益(ゴル油田)があるのは強みです。

企業は、ビールのカールスバーグ、玩具のレゴ、靴のECCO、陶磁器のロイヤルコペンハーゲンなど。
ちなみに、最近日本で話題の北欧100円ショップ「タイガー」はデンマーク企業です。

Photoここまでスイス以外は北欧ですが、各国の特徴(強み)としては、ノルウェーは外海に面しているから漁業、フィンランドは山が多いから林業、スウェーデンは軍事力で先行していたので工業、デンマークは土地が平らだから農業、という感じでしょうか。

6位に、ようやく欧州以外が登場して、オーストラリア。
言うまでもなく資源大国ですが、高いコストによって製造業が衰退しつつあり、いわゆるオランダ病が懸念されています。

ジェトロの調査によると、シドニーのワーカーの基本給は月額4615米ドルで、横浜市の3306米ドルより4割も高い状態。

これではたまらんと、米フォードは16年10月に工場を閉鎖、GM、トヨタも17年末までの撤退を決定し、国内での自動車製造は消えます。

最近、当局による豪ドルへの牽制発言が減っていますが、歴史的にはまだまだ高水準。
先日見たニュースでは、自販機の缶コーラが300円以上もすると、駐在する日本人が嘆いていました。

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