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November 03, 2014

結局、FRBの量的緩和は何の役に立ったのか

先週、FRBは量的緩和(拡大)を終了。

いわゆるQE1~QE3合計で、約4兆ドルを市場に供給。
ドイツや日本の年間GDPくらいに相当します。

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一般的に、量的緩和は金利を押し下げて景気を刺激するものと理解されていますが、米長期金利のグラフを見ると、QE期間中は金利が上昇し、QEを止めると下がるという真逆の傾向が出ています。

「期待で(債券を)買い、現実で売る」という市場特有の現象と理解するには規模が大きすぎて、良く分かりません。

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TIPSとは、「Treasury Inflation-Protected Securities」のことで、物価連動債券。
市場のインフレ期待度を表します。

これを見ると、QE2とQE3は、ある程度効いているのかも、といった感じです。

中央銀行が通貨供給量を増やせば物価が上がる、という期待に働きかける効果は否定出来ない、といったところでしょうか。

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次は雇用で、新規失業保険申請件数です。

QE2、QE3は、トレンドに影響を与えたようには見えません。

QE1は、悪化から改善へのターンと同時期で、かつカーブを強めているように見えるので、効果が感じられます。

自分の記憶を振り返っても、2008~2009年の世界経済は、極端に悲観的ムードが広がっており、誰かが焼け跡に旗を立てて、「大丈夫だ、前に進め」と言って欲しいという飢餓感は、前例がないほど強まっていました。

その意味で政策期待は大きく、有効性は高かったはずです。

日本では「リーマンショック」という言葉が普及しているので私も使いますが、本当のピンチは、9月29日にアメリカの下院で金融安定化法案(TARP)が否決されたことでした。

所詮、リーマンは一民間会社に過ぎませんが、国家が金融危機を放置するのであれば、連鎖は無限に広がるかもしれない。
恐怖が市場を覆い、リーマン破綻で500$の下げだったDOWは、TARP否決で777$下落。

当時は、次々と政府の対策を催促するような相場でしたから、何もしなければスパイラルに悪くなるようなセンチメントでした。

そもそもQEがない時との比較が困難であり、最終的には歴史が判断することですが、

ある種異常な心理下において、QE1は元気薬として結構効いた。2、3については、1ほどの効き目はなかったし、必要性についても評価が分かれる。

くらいが落ち着き処でしょうか。

個人的には、QE2、3は、市場の回復を早めたかもしれませんが、逆に置いて行かれた人の数を増やしたようにも思います。
例えば、大量の資金供給がファンド勢に回って住宅市場が素早く回復したものの、ファイナンスに時間がかかる一次取得者の多くが買い遅れてしまったということはないか、等です。

成長や回復のスピードは、緩やかな方が良いことも多々あります。

なおグラフは、Econbrowserからお借りしました。

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