原油市場は、減産催促相場
昨日のNY市場では、原油ETFや小型の石油開発株、リグ関係等は下げたものの、エクソンとシェブロンは上昇。
原油関連銘柄の中でも選別が進んでいる印象です。
原油価格が半年で4割も下がった要因は、供給過多による「油の余剰」だと報道されています。
じゃぶじゃぶマネー政策が続けば原油は上がるというのが過去の例でしたが、今回は原油がジャブジャブになったのです。
「A glut of oil?/Econbrowser」という記事が背景数字を纏めているので、その骨子を紹介します。
最初のグラフは、カナダの原油生産高の推移。
青の部分が伝統的な原油(crude oil)で、オレンジはオイルサンズ。
増えているのはオイルサンズで、crude oilは1973年でピークアウト。
オイルサンズの原価は高く、新油田で85$前後。
古いものは、40~80$と推定されているようですが、現在の価格では相当部分が市場から退場を迫られます。
次はアメリカで生産される原油の内訳。
赤が、北米48州。
他に、アラスカ、オフショア(海底油田)があり、緑が最近のシェール(tight)オイル。
そのシェールオイルの、油田地域ごとの採算性を示したのが次のグラフ。
WTIが70$を切る現在の水準だと、生き残れるのは3分の1も無い、というところでしょうか。
次は、世界の原油生産量に占める、アメリカとカナダの割合。
この北米2ヶ国を除くと、世界の生産量は、この10年で横這いないしは微減であることを示しています。
世界の原油需要は堅調です。
グラフは、IEAのWorld Oil Demand。
ここ数年、アメリカとカナダで「発見された」、高い原油が市場に出回り、価格は高止りしてきた訳ですが、急変したトリガーは何でしょうか。
次のグラフは、OPECの計画外(unplanned)生産量。
イラン、イラク産原油の穏やかな回復に加えて、2013年後半からリビアの生産量が急増。
特に今年春からは、全体で日量2.5Mバレル以上という、最近では異例の水準まで生産が拡大しています。
これら安い原油に押し出される格好で、高い原油は減産を催促されており、それによって原油の供給過剰が解消されると85$程度が均衡点になるだろうというのが、本稿(econbrowser)の主旨。
筆者のJames D. Hamiltonは、現在UCSD(カリフォルニア大学サンディエゴ校)で教える経済学者です。
見方を変えると、今の「安すぎる」原油価格は、高い原油が消えても安い原油がジャブジャブ供給され続ける可能性を市場が懸念している、と理解すれば良いのかもしれません。
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