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January 16, 2015

スイスフランが暴騰

ユーロ/スイスフラン=1.2(1スイスフラン=0.833ユーロ)を死守するため、スイスフランを売り抑える(?)としていたスイス中央銀行(SNB)が、現地時間15日の朝、突然のギブアップ宣言。(以降、スイスフラン=フラン)

パニックとなった市場では、瞬間的にユーロ/フラン0.85、即ちフラン/ユーロ1.18と一気に40%アップの取引まであったようです。

トンデモナイ値段で決済させられた投資家もいたでしょうし、スイス株は9%の下落。
損失を埋めるためのポジション縮小や債券への逃避が発生し、相場は一段のリスクオフで反応しました。

しかしながら、無理な介入が終了したという意味では、一つの不自然さの解消というポジティブな見方も出来ます。

フラン/ユーロの2000年以降のチャートです。(直近ほぼパリティですが、反映されていません)
Chfeur

リーマンショック前、フランはユーロの6割前後で推移していましたが、ギリシャの嘘発覚に端を発した欧州債務危機によってフランは避難場所として買われ、2011年にはユーロの9割水準まで高騰。
輸出産業等を守るため、SNBは自国通貨高を防ぐ無制限の介入を始めました。

過剰な円高に苦しんだ日本人としてシンパシーは感じるものの、なぜスイスの介入は日本ほど批判されないのかという思いは以前から指摘されていたところです。

度重なるフラン売りユーロ買い介入の結果、SNBのバランスシートは、GDP比で85%まで拡大。
FRBとECBが25%、日銀が現在60%弱ですから、いくら小国とは言え、やはり異常な水準です。

スイスは財政健全で国債発行高が少ないこともあり、SNBのバランスシート(資産の部)におけるスイス国債の割合は10%以下。
資産の9割は外貨で、その半分(46%)がユーロ。(SNB balance sheet items

これでは、ユーロを担保にフランを発行しているみたいなもので、やればやるほどフランがユーロに同化するだけとなり、金融政策の自主性は失われて、限界は見えていました。

私はこのことを、今月7日の佐々木 融さんのオンラインセミナーで聞き、すぐにフランを買おうとしてユーロ/フランのチャート確認までしたのですが、勇気が無くて実行に移せなかったことを、今つくづく悔やんでいるところです。

Eurchfmap
スイスの人口は800万人。
GDPは日本の8分の1程度ですが、一人あたりでは日本の倍の8万ドル。

経常収支は黒字拡大傾向で、財政も健全。
欧州の中央にあり、公用語は4つ。
簡単に国境を越えて買い物をしたり、就職したりする立地。

それでもユーロより大幅に安い通貨を持ちたい、というのは贅沢な願いだったということかと思われます。

もしスイスが安い通貨を持ちたいなら、物価を安くする=自分たちの賃金を下げる、あるいはユーロよりも更に質の悪い資産をSNBが買うしかない理屈です。

そうか、日本国債を買ってもらえば良いかもしれません。

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