石油の帝国
「石油の帝国---エクソンモービルとアメリカのスーパーパワー」
は、ひたすら「エクソンモービル」の実像に迫ろうとチャレンジした本です。
本日から、電子書籍も発売されました。
シェブロンがカリフォルニアに本拠を置き、比較的ソフトな文化を持つと言われるのに比べ、NYからテキサスに本社を移したエクソンの文化は傲慢であり、自己中心主義と評されます。
国連でブッシュを悪魔呼ばわりした故チャベスが率いたベネズエラ。
ベネズエラの原油は硫黄分が高く、ほとんどの製油所が精製に適しませんが、エクソンがベネズエラ国営石油会社と共同で設立したルイジアナの製油所はベネズエラ産原油に合わせて調整され、利益が出るようになっています。
エクソンにとっては、時にアメリカの国益さえ、自社の利益より後回しになります。
エクソンは1989年3月に、保有するタンカー「エクソン・ヴァルディーズ号」がアラスカで約42000KLの原油を流出させる大事故を起こしましたが、その後は独自のセキュリティプログラムによって、さらに帝国としての足場を固め、1999年にモービルを約9兆円で買収し、2009年にはシェールガスのXTOを約4兆円で買収。
XTO買収は市場から高買いと批判されて一時株価は低迷しましたが、その後は持ち直し、現在の時価総額は約46兆円。
あまりの巨大さ、環境問題への否定的スタンス、妥協しない訴訟姿勢などから、リベラル派からは悪役扱いされますが、スーパーメジャーの飽くなき資源探求の姿勢がなければ、アメリカだけでなく、世界のエネルギー需給に計り知れない影響が出るのも事実。
本書では、プライドと傲慢さが同居する帝国の企業文化を窺い知ることが出来ます。
エクソンが傾いても誰も助けてくれない、いや助けるには大きすぎる。
だとすれば、全ては自分の責任であり、エクソンは他人が作ったルールにはサインしない。
政府に寄りかかろうとする企業が増える現代において、エクソンこそがフロンティアスピリッツの体現者なのかもしれません。
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